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嘘から始まる恋ゴコロ
恋愛リレー小説 - 青春

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嘘から始まる恋ゴコロ 3

「それなら、いいんじゃない?」
いいんじゃない、亜紀はそう言った。けど
「なにが?」
いいことはなにも無いはずなこの状況。
「付き合ったままで。」
事も無げに言われ、今度はあたしが目を丸くした。
「ひどくない?」
好きな人が別にいるのに付き合うなんて・・・。
「最初から、もう渚はひどいことしちゃってるんだよ。」
「・・・・・・。」
何も言えなかった。その通りだから。
「・・・だから、期限付きでさ。」
「期限?」
「そ、だって相手の気持ちも考えてみなよ。好きな相手から告られて付き合うことになって喜んで、次の日にはあなたじゃなかったの間違えちゃったごめんね。じゃ人間不信になっちゃうよ?」
「う・・・っ。」
言葉に詰まる。

「渚はね、もう嘘を3つついてるんだよ。1つ目は手紙、2つ目は矢口君への返事、3つ目は・・・。」
「3つ目は?」
「・・・教えない。自分で考えてみよっか?」
空を見上げて考える。なんだろう。2つは自分でもわかってたけど。う〜んと唸る。
「ま、それはともかく。期限は1ヶ月。」
突然話題が変わり「嘘」がなんだったかはどこかへ行ってしまった。
「なんで1ヶ月?」
「1ヶ月後は夏休み。終業式の日にでも別れればその後は休みで顔を合わせることもないし、休み明けにはそんなこともあったねって感じ?」
とんでもないことを平然と口にする。
だけど今のあたしはそうすることが正しいような気がした。祐を傷つけない方法がそれなら、と。結局あたしはずるいから・・・逃げてしまった。
「わかった。そうする。」
「よし、じゃこの話はおしまい。なぎ、そろそろ教室戻ろ?」

そう言うと、亜紀は制服に付いた芝をパンパンと払っていつもの笑顔であたしを見た。
「渚」ではなく「なぎ」に呼び方が変わったということは、この話は終了ということだろう。
あたしは頷いて、亜紀と一緒に教室に戻った。

「さて、どうするかな・・・。」

という亜紀の呟きは、風に乗って流されあたしには届かなかった。

1ヶ月付き合う。その言葉が頭の中でくるくる回る。
(・・・付き合うって何するんだろう。)
そう、あたしは今まで誰かと付き合った経験がない。ずっと翼を見ていたから。友達の位置に固定されてそれで満足していたから。
(登下校を一緒にして、休みの日は2人でどこか出かける・・・ていうのが相場かなぁ。)
授業中だというのにそんなことばかり考えて呆けていた。
ふと窓の外を見ると特進科が体育で外に出ている。
あ・・・と思わず声が出そうになった。
祐と目が合ったのだ。
表情が変わる。またあの表情。優しい笑顔。さすがに手は振れないけど、あたしも笑顔で答える。
その時、視線を感じた。
そちらに目を向けると翼と目が・・・合ったような気がしたのだけれど、翼は何もなかったように友達の中に行ってしまった。
(目・・・合うかと思ったのに。)
残念、と小さく溜め息を吐くいて視線を教室に向ける。
だけど、よくよく考えれば目が合わなくて良かったのかもしれない。
きっと翼の耳にも、祐とあたしが付き合うことになった事は入っているだろうから。
放課後の駐輪場なんて、みなさん見てくださいって言っているような状況だし。
おまけに、朝一緒に登校してきたし。
胸がチクリと痛んだ。
(・・・翼は、何か思ってくれるのかな。あたしが誰かと付き合うってことに。良かったねって普通に思っていつもの笑顔を見せるのかな、それとも、少しは寂しいとか思ったり・・・はないかな。)

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