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嘘から始まる恋ゴコロ
恋愛リレー小説 - 青春

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嘘から始まる恋ゴコロ 2

と呟いた。
「ううんっ、ぜんっぜん迷惑じゃないっ。」
そんな顔をさせたくなくて、力を込めて言ってしまった。
ぷっ・・・。
見れば、祐が口を手で押さえながら笑いを堪えている。
恥ずかしくなって軽く睨む。
「や・・・、その、馬鹿にしてるわけじゃなくって。有賀さんって優しいなぁって思っただけで。」
優しいの意味がわからなくて首を傾げる。
「だって、俺が寂しそうな顔したから力込めて言ってくれたんでしょ?」
そうだけどさ。だからって
「笑うことないじゃん。・・・優しくして笑われるなんてさっ。」
「ごめん、ごめん。・・・ところで優しい有賀さんにお願いがあるんだけど。」
「なに?」
剥れた顔で祐を見上げる。

「名前で呼んでくんない?ほら、やっぱり付き合ってるわけだから名前で呼んでほしいかな、なんて。・・・だめかな?」
少し不安そうに聞いてくる。
「あぁ、うん、いいよ。」
あたしは素直に頷いてから、「あっ」と心の中で叫んだ。
(付き合ってるのに思いっきり賛同してどうすんのよ、あたし。)
こんなの、間違ってるのに・・・。
そうだよ、間違いって言わなきゃ。
「あの、さ。祐?」
「ん?なに?渚?」
ふわりと笑う。
また昨日みたいな表情。あたしはこの表情に弱い。
「ま・・・ってたの。どのくらい?うちに来ちゃえば良かったのに。」
また言えない。
「そんなに待ってないよ?・・・それに家まで押しかけたら悪いかなって。」



結局そのまま他愛のない話をしながら、並んで学校に向かう。
昇降口であたしは普通科だから東館、祐は特進科だから西館に別れる。
「帰り、一緒に帰ろ。先に終わった方が教室に迎えに行くってことで。」
祐はそう言うと軽く手を振り、西館へと歩いて行った。

教室に入ると、翼同様中学からの友達の亜紀が話しかけてきた。
「なぎ、なんかなぎが特進の人と付き合いだしたという噂を聞いたんだけど・・・。」
そうでしょう、そうでしょう。何が言いたいかはわかってますよ。
「とうとう翼と付き合うことになったか。」
亜紀はあたしが翼を好きなことを知っている。
もちろん手紙のことも。
「残念、ハズレ。」


「へぇっ!?」
素っ頓狂な声を上げ、亜紀のニヤついた顔が固まり、目が落っこちそうなくらい見開いている。
話をきちんとしたかったが、HRが始まり昼休みまで待ってもらった。

「実は・・・さ。」
昼休みになりあたしは、昨日のことを亜紀に説明した。
手紙を間違えて入れてしまったこと。
・・・相手が実は自分を想っていてくれて、付き合うことになってしまったこと。
亜紀は眉間に皺を寄せながらも、あたしが話している間ただ黙って聞いていてくれた。
「・・・で、どうするの?」
話が終わったところで、亜紀が聞いてきた。
本当にどうするの、だ。
だけど、どうするもこうするも間違いを訂正しなきゃならないのはわかってる。
「今日の放課後、一緒に帰る約束してるから・・・その時話す。」


「無理じゃないかな?」
被せるように亜紀が言う。
そんなことない、無理じゃない、と言いたいのにあたしの唇は動かなかった。
変わりにぐっと唇を噛み締め俯く。
そんなあたしを見て少し困った顔を亜紀はした。
「じゃぁさ、渚は矢口君をどう思ってるの?」
「どうって・・・。」
「好き?嫌い?」
好きか嫌いか。
嫌い、じゃない。嫌いじゃないから間違いを訂正できていないわけで・・・でも好き、はどうだろう。祐の笑顔を見るときに感じるモノは好きという感情なのだろうか?
「嫌い・・・じゃないけど、好きかわからない。」
ずるい答え。だけど今のあたしの正直な気持ち。

「だよね。」
まるで今の答えを予想していたかのように、うんうんと頷いている。

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