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嘘から始まる恋ゴコロ
恋愛リレー小説 - 青春

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嘘から始まる恋ゴコロ 20

「有賀さんてずるいよね」
 侮蔑の色を含んだその声音で顔を見なくても篠崎さんが怒っているのがわかる。
「杉山くんのこと好きなくせに矢口くんと付き合って……。そのくせ杉山くんのことも独占したいなんて、はっきり言って調子良すぎ」
 「そんな……翼は友達だし、独り占めするとかそんなつもりないから」
 乾いた喉の奥に言葉が張りつきそうだった。平静を装いながらも胸の奥にあるものは激しく脈打っている。
「ねえ、なんで有賀さんはそんな必死に矢口くんを好きだって嘘つくの?」
 顔をあげると、篠崎さんはもう怒ってはいなかった。ただ無表情にあたしを見ている。
「有賀さんはそれでいいかもしれないけど、そんな嘘つかれて一番傷つくのって矢口くんじゃない?」
「嘘なんかついてないよ。あたしが付き合ってるのは矢口くんだから……」
 もうずっと嘘をついている。篠崎さんにだけじゃなく、祐にも、それに自分自身にも。罪悪感を感じる感覚が麻痺しそうなくらいに。
「付き合ってるっていうのは単なる事実でしょ。好きじゃなくても付き合うことはできるし。そういうことじゃなくて、私が言ってるのは気持ちのこと」
  あたしの感覚は麻痺している。嘘が滑らかに口をついてでる。
「好きじゃなくても付き合えるかもしれないけど、あたしは矢口くんのことが好きだから付き合ってる」
 人気のない昼休みの図書室に、あたしの嘘はやけに大きく響いたような気がした。篠崎さんは表情を変えないまま、ゆっくりと瞬きをした。
 「じゃあ私が翼くんと仲良くしても大丈夫なんだよね?」篠崎さんは、その大きな透きとおる瞳で私をみつめた。チクリと胸が痛んだ。まるでわからない自分の気持ちが、すべて見透かされてるのかと思うほどだった。「それは翼がきめることだもん」私は目を合わせられなかった。
「結局、一番傷付くのは嘘ついた本人なんだからね」篠崎さんの言葉が胸に残った。その表情はうつむいてたからよくわからなかった。
 ―そう、矢口くんとは好きで付き合ってるんじゃない。―
じゃあなんで本当の事が言えないの?

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