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嘘から始まる恋ゴコロ
恋愛リレー小説 - 青春

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嘘から始まる恋ゴコロ 19

 自分がこんなに嫉妬深いとは思わなかった。
 思いきり泣きたいのに涙もでなくて、よけい胸が苦しくなる。
 暗闇のなか目をつぶれば頭に浮かぶのは篠崎さんの困ったような顔と別れ際の翼の言葉。
「……ごめんなさい」
 届くことのない謝罪の言葉は、自分の耳に虚しく響くだけだった。


――もしも運命の別れ道なんてものが本当にあるなら、あたしと翼にとってのそれはこの日だったのかもしれない。
 翼はいつだって優しくて、口に出さなくてもあたしの気持ちをわかってくれる。あたしはずっとそう思ってた。



 学校に行きたくないと思ったのも、翼に会いたくないと思ったのも初めてだった。
 朝、窓から見えるのは暗く濁った曇天。鏡に映っているのは寝不足のせいで暗くむくんだ顔。
 もしかしたら……なんて期待してたけど翼から電話もメールもなかった。あたしもしなかった。
 電話して翼が出なかったら? メールして返事がこなかったら? そんなことを考えると怖くて何もできなかったから。
 あたしは携帯を手にとり、祐にメールを打った。
[今日は日直なので先に行きます]
 嘘をついた。
[わかった 帰りは一緒に帰れる?]
[今日は亜紀と帰る約束してるから ごめんね]
 こんなことをして何になるんだろう。祐を避けて、翼から逃げて。こんなんじゃいけないって本当はわかってるのに、あたしはわからないふりをした。




 昼休みの図書の貸し出しも図書委員の仕事のひとつだ。当番だったあたしは早目にお昼を済ませ、閑散とした図書室のなかでぼんやり過ごしていた。
 朝見た灰色の雲は空いっぱいに広がり、空は今にも雨が降り出しそうな色をしている。
「――雨、降りそうだね」
 ぼんやりとした頭に響いたその声に、あたしはびくりと体を震わせた。
「隣いい?」
 にっこりと微笑んでいるけど、有無を言わせぬ強い口調だった。小さくうなずくと篠崎さんは隣の席に腰を下ろした。
「有賀さんって杉山くんのことが好きなんでしょ?」
 そう言った篠崎さんは変わらず微笑んでいる。あたしは何て答えていいかわからなくて、ただ篠崎さんの口元の辺りを見ていた。
「でも、矢口くんと付き合ってるんだよね?」
「……うん」
「それって杉山くんのことが好きなのに矢口くんと付き合ってるってこと? それとも、矢口くんと付き合ってるうちに杉山くんのことが好きになっちゃったってこと?」
 答えられなくてうつむいた。すぐに、大きなため息。

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