嘘から始まる恋ゴコロ 18
「有賀さん、どれにする?」
隣に座った篠崎さんがメニューを広げてみせた。目が合うと、「迷っちゃうね」と微笑んだ。
だけど、あたしは微笑み返せなかった。篠崎さんはなにも悪くないのにイライラする。そんな気持ちを隠したくて目を逸らした。
「えっと……あたしアップルパイにする」
「アッパルパイ? あっ、アイスもつくんだ。美味しそう。私もこれにしよっかな。真似してもいい?」
「……どうぞ」
自分でも驚くくらい冷たい声がでた。
さっきから篠崎さんは全然悪くないのに思いっきり八つ当たりだ。
翼と篠崎さんは友達で、あたしは翼の彼女でもなんでもない。だから、あたしがこんなふうにイライラして篠崎さんに冷たい態度をとるなんて、そんなの間違ってるのに。
頭ではわかってても気持ちが追いつかない。篠崎さんは翼のことが好きなんじゃないかと思うと篠崎さんが翼に話しかけるだけで自分でもどうしようもないくらいイライラした。
結局、カフェで軽い食事をした後篠崎さんは
「それじゃ、また。」
と帰って行った。
2人で肩を並べて歩くけど、やはり居心地が悪い。
自分のせいだけど。
無言のまま歩いていると
「なぁ、なぎ。さっきの態度はないんじゃない?」
翼がちらりとこちらを見て言った。
ぐっ・・・と下唇を噛み締める。
自分が悪いのは分かってるけど、それでも篠崎さんの肩を持つような口ぶりにイラっ・・・としてしまう。
「なぎ?聞いてる?」
いつまでも返事をしない私をじっと見ながら、翼は聞いてきた。
何も言えないよ。
「俺…ああいう態度のなぎは嫌いだな…」
呟くように翼は言った。
翼のその一言で、私の中で何かが弾けた。
「翼には関係ない…」
もう止まらない。
「翼なんかに…私の気持ちがわかるわけないじゃないっ!!」
私は言うだけ言うと、その場から逃げるように走り出した。
翼が何か言っていたような気がしたけど、私の耳には届いていなかった。
*
家に着き、そのまま自分の部屋に入る。
ずるずる・・・とドアに体を凭れかけさせながらしゃがみこんだ。
「何してんの・・・あたし。」
自己嫌悪に今更ながら苛まれる。
あたしと翼は『友達』なのに。
勝手にヤキモチ焼いて
勝手に怒って
「呆れられた・・・よね。」
翼に合わせる顔がない。