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嘘から始まる恋ゴコロ
恋愛リレー小説 - 青春

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嘘から始まる恋ゴコロ 17



 駅のすぐ近くにあるデパートのワン・フロアーが写真展の会場だった。デパートのなかは休日ということもあって混雑していたが、写真展のほうは並ぶこともなくすんなり入ることができた。
 中に入ると思っていた通り若い女の子が多く、そのなかにちらほらと彼女について来たらしい男の子の姿がある。
 もしかしてあたしと翼もカップルに見えたりするのかなぁ。なんてことを考えて、あたしはひとりで舞い上がった。
 色とりどりの写真が飾られた会場内はどこか別世界のようだった。写真集よりずっと大きく引き伸ばされた写真の数々に圧倒される。 
 すごいすごいすごい。
 本当に感動したときは言葉がでないってよく言うけど、このときのあたしは正にそんな状態だった。
 写真の持つ色の洪水に飲み込まれ、カラフルなお菓子の入った瓶のなかに自分がぽいと放り込まれたような気さえしてくる。
 隣に翼がいることも忘れて魅入られたように立っていた。
「杉山くん……?」
 そんなあたしを現実に引き戻したのは翼を呼ぶ声だった。
 声のしたほうに顔をやると、篠崎さんが大きな目を丸くして立っていた。翼も驚いたようすで目を見開いている。
「やっぱり。すっごい偶然!」
 篠崎さんのほっぺたが赤くなり、興奮しているのがわかった。あたしは居心地の悪さを感じてそっとふたりから離れた。
 翼が篠崎さんと知り合いだなんて知らなかった。
 クラスは違うし、中学だって違うのになんで? 悶々としながら無意識のうちにうつむいていた。そこを、ポンと頭を叩かれる。翼だった。
 ふたりの話が終わったとわかり、ほっとしている自分に気づき嫌な気分になる。
 やだな、これじゃなんか篠崎さんに嫉妬してるみたい。
「なぎ、このあと篠崎さんも一緒でいい?」
「え……?」
 写真展を見終わったら、雑誌で見たカフェに行くことになっていた。あたしは返事ができない。
 そんなのやだよ……。だって篠崎さんは……。
 でも、あたしには断る権利なんかないと思った。あたしは翼の友達で。篠崎さんも翼の友達なんだから。



 あたしたちが通されたのは窓際のソファーが置かれた席だった。大きな窓からは庭が見え、終わりかけの紫陽花と茂る木々が地面に黒い影を投げかけていた。
 都会にあるのにそこだけ見ると田舎にいるような、そんな不思議な気分になれるお店だと雑誌には書かれていた。

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