嘘から始まる恋ゴコロ 15
「……新聞屋に蜷山実和の写真展のチケットもらったんだけど一緒に行かない?」
「えっ……蜷山実和?」
図書委員会の書架整理のときに見つけた一冊の本。表紙は強烈なまでに鮮やかな色をまとった女の子の写真だった。あたしはひとめで心を奪われ、委員会が終わるとすぐ本屋に走った。
すごい……。こんな写真もあるんだ。
あたしは買ってきた写真集を部屋でドキドキしながら見た。ページをめくるごとに目に飛びこんでくる色、色、色……
あたしは感動しすぎて、しばらく亜紀がうんざりするくらい蜷山実和の話ばかりしてた。
「旅行俺のせいでなぎも行けなくなったし、それに渚まえ好きだって言ってたじゃん?」
電話越しに聞こえる翼の声。亜紀にはうんざりされるくらい話した蜷山実和の話。でも、翼には一回しかしてない。
それなのに覚えててくれたんだ。
胸の奥をぎゅっとつかまれたみたいな気がした。
「うん。でも翼よく覚えてたね」
「そりゃ〜頭がいいと記憶力もいいんだよ」
翼が笑ったのがわかる。「自慢?やな感じ」と言いつつもくすくす笑ってしまう。
「なぎ、今週の土曜は空いてる?」
「ん。大丈夫」
「じゃあ、今週の土曜で。昼過ぎに渚ん家行くよ」
「うん……わかった」
電話を切ったあともなかなかドキドキがおさまらなかった。
翼とふたりで出かけるなんて夢をみてるみたいだ。あたしはぽぉっとしたまま携帯のディスプレイを見ていた。
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土曜日の朝、あたしはテレビのまえに正座して画面を食い入るように見ていた。待ち続けた甲斐あってようやく天気予報のコーナーがはじまったときには足が痺れていた。
「本日はお天気に恵まれた一日になるでしょう――」
テレビ画面のなかのお天気お姉さんがにっこりと笑った。あたしは、よかったぁ……と小さく胸をなでおろす。
二階の自室。翼が来るまでにはまだあと何時間もあるのに、あたしは慌ただしくクローゼットのなかをひっかきまわした。
服買っとけばよかったなぁ……。
これはダメ、あれもダメと頭がパンクしそうになるまで悩んだすえ、チェックのキャミにジーパン、それにパフスリーブの白い半袖ジャットという組み合わせに落ち着いた。
変じゃないよね……?
あたしは姿見の前に立ってチェックしてみた。