嘘から始まる恋ゴコロ 14
翼を好きだと思えば思うほど、祐への罪悪感で胸がいっぱいになる。
翼を好きだと想う気持ち。祐を傷つけたくないと思う気持ち。
ふたつの気持ちがあたしのなかで攻めぎあっている。
「どぉすればいいのぉ……」
雨粒のついたガラス窓におでこをつけたらガラス越しに感じる雨の雫といっしょに涙が零れ落ちていった。
*
そのままどれくらい泣いていたのかわからない。泣きすぎてぼうっとする頭の隅で携帯の着信メロディーが聞こえたような気がした。のろのろとカバンの奥を探り携帯を取り出すと翼からだった。翼から電話がくることなんて滅多にないのに。なんの用だろう? あたしは迷い、ためらいつつも出ることにした。
『渚? いま平気?』
「うん……どうしたの?」
鼻声なことに翼は気がつくかもしれない。そう思うと自然と小さい声になった。
『・・・どうかした?』
やはり気付いてくれた。
せっかくばれないように小声にしても、気付いてくれた。
あたしの・・・変化に。
そういうとこが好き。
そう、あたしは翼が好き。
まるで自分の気持ちを再確認するように心の中で呪文のように唱えた。
「ん、なんでもないよ。」
なるべく明るく話す。
すると、翼はそれ以上追求することはなく
『そっか。』
と呟いた。
無理やり人の気持ちをこじ開けようとしない、翼の優しさに胸がじん・・・となる。
「・・・それより、翼が電話してくるなんて珍しいね。そっちこそどうかしたの?」
少しの沈黙。
『いや、急に渚の声が聞きたくなっただけ。』
とくん・・・。
胸が高鳴る。
「え・・・?」
それってどういう・・・。
『なんてな、冗談だよ。』
「なぁんだ、冗談か〜。」
残念、と思う反面、ほっと安堵している自分がいた。
「なぁ・・・空いてる日とか、ない?」
ぼそり、と翼が言った。