〜再会〜 62
「ん…ちょ…っ
あざみっ‥」
「……………」
「ちょっと…や‥
待っ…」
息つく暇もなく降り注ぐ薊のそれに、さすがに恋歌も息苦しくなって薊の胸板を押し返す。
ようやくひと息ついて見上げれば、あからさまに不服そうな薊の顔。
「あざ…」
「…無理。」
声をかけようとした恋歌を遮ると薊はそのまま勢いよくその細い身体を抱きしめる。
「あ‥あざみ?」
言葉の意味に混乱しながらも、薊に抱きしめられて恋歌の心臓は騒がしく鳴り続けていた。
そしてそんな恋歌の問いかけに薊は腕により一層力を込めて強く抱きしめる。
「もー無理。待てない。
今まで俺がどんだけ我慢したと思ってんだ。今更やめろって言ったってぜってえ離さねえからな。」
「薊…。」
今、目の前にいるのは…あたしの大好きな人。
勢いで言った自分の言葉に自分で動揺して、薊が追いかけてこなかったら、口走ってたかもしれない"嘘だよ、好きじゃないよ。"否定の言葉。
「恋歌…。」
もう一度、薊は自分の唇を恋歌の唇に重ねた。
微かに震えた、薊の唇。
あぁ、そうか。
恋歌はゆっくりと瞳を閉じた。
あたしは、薊があたしを好きって知ってるから…。
あたしの気持ちを知らない薊がどんな気持ちか…考えた事なかった。
愛しい―。
きっとこの感情はそんな名前。
「本物…だよな。」
震える唇を微かに開き、薊は声を吐き出す。
「幻じゃあ…ないよな。」
確かめるように、恋歌の頬に触れた。宝物に触れるかのように、慎重に、慎重に触れた。
恋歌はコクンと頷くと、薊の背中に腕をまわした。
「恋歌…」
薊は目の前にいる愛しい人を確かめるようにそっと抱きしめる。