〜再会〜 63
「好きだ…。ずっと恋歌だけが好きだった。」
薊の一言一言がじんわりと恋歌に染み込んでいく。
…いつも強気で、自己中で短気で。
自分の欲しいものは奪ってでも手に入れなきゃ気が済まなくて。
あたしは振り回されてばっかりで。
だけどいつもいつも、分かりにくい素直じゃない優しさをくれた。
そんな薊を、あたしはずっと昔から知ってた。
「あたしも…。
あたしも薊がだいすき」
今、薊を心から愛しいと思う。
その気持ち全部を込めて、恋歌は薊をつよく抱きしめ返した。
「…やべー俺いま超しあわせ‥」
抱きしめられているので恋歌から表情は見えないがそう言ってより強くなる腕の力に素直に身をゆだねる。
そして薊の腕の中で好きな人と気持ちが通じ合うという事がこんなに幸せな事だということを、恋歌も改めて噛みしめたのだった。
「てゆーか、ちょっと待てよ?」
その時ふいに薊が顔を上げた。
体はそのまま恋歌を抱きしめたままなので恋歌はその体制のまま薊を見上げる。
「‥?
どうしたの?」
見上げた薊の表情は眉間にシワが寄るほど歪んでいて。
「って事は兄貴が言ってたタチ悪ぃ最低最悪野郎ってのは俺のことか?」
「あー……。」
あながち間違っていない、というか大変に的を射ていたささらの例えに共感していたなんて言えるはずもなく。
なんとなくにごすしかない恋歌にかまわず薊は熱くなっていく。
「あの野郎…。
今日うち帰ったらぜってえぶっとばす…!」
そう言うとぎりっと音が鳴りそうなくらい奥歯を噛み締める。