PiPi's World 投稿小説

〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

の最初へ
 -1
 1
の最後へ

〜再会〜 1

「じゃあ大きくなったらね。」
 小さい頃大好きだった隣の家に住むお兄さん。
セピア色の髪と瞳が印象的で、整った顔つきは誰もを魅了した。
もちろん、小さい頃のあたしも。
誰よりも、好きだった。


「恋歌〜遅刻するわよ」
 ふぁ…大きなあくび一つ。 葵 恋歌−あおい れんか−はようやく制服に着替え終わったようだ。
今年で高校二年生に進級。危ういと思われた保健体育の単位も何とかぎりぎりのところで難を逃れた。
「今、行くよ。」
 適当な返事を返し、無造作におかれたカバンを掴み階下に続く階段を駆け下りた。
「いってくる!」
 慌ただしい朝は彼女の家にとっては当たり前の事。
玄関を飛び出した恋歌の目は、途端に動きをやめた。
一瞬。僅か一瞬の隙をついて瞳に飛び込んできた何か。
「…兄ちゃん?」
 微かに口を開く。
 瞳のすみで動いたのは、確かに隣人だった・少年。
セピア色の髪と同色の瞳が、恋歌の瞳を奪ったのだ。
そんなはずはない。
あれから何年経ったと…自分に言い聞かせる恋歌。何度も、何度も。
でも、偶然の一言じゃ片づけられないほど似ている。
いや、紛れもない彼自身。
整った顔立ちも。悪目立ちしそうなつり眉、たれ目。
でも…。
恋歌は困惑の表情を浮かべた。
「薊!」
 少年の後ろから、もう一人。
少年より少し年をいった青年に恋歌は再び目を見開いた。
「…薊!?」
 春日谷 薊(かすがだに あざみ)
彼は、少年の弟だった筈。…いや、今でも弟だ。
 『薊』と呼び止められた少年は、背後をチラリと見ただけで、歌恋に再び目をやる。
 そして少年は、玄関の階段の途中で、愕然と立ち尽くした歌恋のほうへ一歩踏み出す。
 階段を二段残して立っている歌恋が、それでも少し見上げてしまうくらいの長身の少年は、グッとその端正な顔を歌恋の顔を近づけ、あの頃と同じ笑顔で微笑んだ。
 そう!誰もを魅了してやまなかったあの笑顔…
『やっぱりお兄ちゃんだ!』そう口に出しかけたその時、
「よぅ!歌恋。相変わらずガキだな。顔も…ココも」
 少年の微笑みは、悪ガキ特有の笑顔に変わり、その差し出した人差し指は、真っ直ぐ歌恋の胸元を指差した。
「薊!?」
 咄嗟に少年を突き飛ばしてそう叫んでいた歌恋…ぜぇ、ぜぇ、と肩で息をしながら、目の前で不敵な笑みを浮かべた美少年を見て再び愕然とし、そして確信したのだった。
『間違いない。彼は、私の天敵『春日谷 薊』だ!』






隣人夫妻には二人の息子がいた。仕事であちこち飛び回ってる夫妻にとっての唯一の癒し、それが息子だった。
春日谷 薊−恋歌はいつもいじめられた記憶しかなかった。その度に薊の兄、簓(ささら)に助けられたのだ。
いつも笑顔で、最上級の優しさを恋歌に与えた。

SNSでこの小説を紹介

初恋の他のリレー小説

こちらから小説を探す