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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 7

 恋歌は、フラフラと二、三歩あるくと、一気に薊向かって走り出した。
 薊の前に立ち塞がり、はぁ、はぁ、と息を弾ませる恋歌 ポケットに手を突っ込んだまま、恋歌を見下ろした薊は、何事もなかったように『なんだよ』と恋歌に無表情で問い掛けた。
「薊のばか!!私はね、アメリカ人じゃないのよ!キスは、あんたと違って、好きな人としかしないんだから!!薊なんて、大嫌い。あんたなんか…帰ってこなきゃよかったのよ!!」
 一気に捲くし立てた恋歌は、勢いに任せてその左手を振り上げた。
―パチンッ―
 乾いた音が、冷たい冬の空気に反響し、頬を抑えた薊が、振り返ったると、恋歌の姿は遥か彼方に消えていった。
 

後から溢れて来る涙が悲しい程に冷たいのに恋歌は気付く余裕も無かった。
『…』(どうして?嫌なのに…あんな奴、嫌なのに…)
恋歌はいつの間にか薊を思う自分が居る事に気付いた。頭では否定し続けたが心に嘘をつくのは難しい事なのだ。
「バカみたい…」
 ベッドの上で、そう呟いたのは恋歌。
 家路に着いてから、ずっとそこに突っ伏したままだった恋歌は、すっかり辺りが闇に包まれていることに気付き、電気をつけようとベッドサイドに腰掛けた。
ふぅ〜っと大きく溜息をついたその時、耳のすぐ傍でクスクスという笑い声が聞こえてハッと顔を窓辺に移した。
「今のは何の溜息だよ。恋歌」
「!!」
 その声はまぎれも無く、隣人、薊の声…
 恋歌の部屋と隣の薊の部屋は1メートル程しか離れていない為、窓の桟に頬杖をついてこちらを見ているその妖しい眼光は、暗闇でも、恋歌からクッキリと見て取れた。
恋歌はドッと立ち上がり、窓に近づくと、何も言わずカーテンに手を掛けた。
「まてよ!」
薊にしては珍しい、その慌てたような声色に、恋歌は、思わず手を止めた。

「ちょっ…離してよ」
 微力ながらの抵抗に、眉間に力を込める薊。
「…何。」
 出来るだけ、素っ気なく恋歌はつとめた。
「………悪かったよ」
 ボソリ。
注意して聞かなきゃ聞きそびれるほどの小さな声に恋歌は…大きな瞳を更に大きくして驚いた表情を見せる。
 薊が−誤った……。
驚いた理由は、それで充分である。
 しかし、驚いたと共に、恋歌の心を支配したのは、溢れる悲しみ…
 『好きでもない人とキス出来る』という。
 その薊が『悪かった』と謝るということは、翻訳してみれば『好きでもないのにキスして悪かった』と言われているようなもの…
 恋歌は、そう思わずにはいられなかった。

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