〜再会〜 60
「なっ…てめえなに笑ってやがる!こっちは真剣にだなあ…!」
堪えきれず思わず吹き出してしまった口を抑えて、恋歌はがなる薊にバレないように自然ににやつく顔を隠す。
「こほんっ、うん、ほんとだよね。」
「ああ?!」
本当に彼なりの真剣だったのだろう。
話の途中で吹き出されて、薊は本格的に不機嫌そうな表情になっていく。
「ほんと、薊の言う通り。
最低最悪なのよ!
たまになんであたしこんな人好きなんだろうって思っちゃうくらい」
「お…?おう…」
自分で言っておいてまさか最低うんぬんを肯定されるとは思っていなかったのだろう。
むしろ開き直るような恋歌の態度に薊はどう反応して良いのかたじろいでいた。
それは薊の事だよ。と告げたら薊はどう反応するだろう。
薊を好きだと知って、顔を綻ばせるだろうか。
はたまた、その最低最悪の人間が自分の事だと知り顔を歪ませるだろうか。
どちらにしても、薊に高野の事についての誤解をとかなければ…。
「あのね。だから…。」
「分かってるから。」
…は?
誤解を解こうとする恋歌を、薊は再び制止する。
「最悪な奴でも好きなら…何も言わないよ。」
当の薊は、聴く耳を持たない、と言った感じで恋歌の言葉に耳を傾けない。
それどころか、自分の中で全てが完結している、と言った感じだ。
(何言ってるの?私は薊が好きなのに。薊がどう思おうと、誤解されたままじゃ嫌だ…)
「違うよ!私が好きなのは高野君じゃないんだってば!!私が好きなのは…」
勢いあまって叫んでしまい、ハッとして口をつぐんだ。
「恋歌…?」
鈍い薊にムカついて、素直じゃない自分が情けなくて、涙が出てきた。
「れん…」
薊が思わず手を伸ばす。
「好き…」
気づいたら薊の言葉を遮っていた。
「薊が好き…」
涙を目にいっぱい浮かべながら、真っ直ぐに薊を見据えた。