〜再会〜 59
しかも高野はとても誠実な性格だったように思う。
あまり関わったことのない恋歌ですら、高野が彼女がいるかどうかあいまいに濁すような性格ではないと知っている程だ。
というかなんにせよそもそも恋歌には自分が高野に片思いをしているという記憶がない訳で。
「うーん…」
(本当に話が見えない…。
顔も運動も頭もパーフェクトで女関係があいまいな鈍感な人って…
そんなの薊じゃあるまいし。
兄ちゃんも一体どういうつもりでそんな事……)
「あれ?」
そこまで考えて恋歌はふと顔を上げる。
…もしかして。
「ねえ、その話聞いたときそれが高野君の事だって、兄ちゃん言ったの?」
「…あ?」
眉ををひそめすっかり見慣れた顔に戻ってしまった目の前の幼なじみは、一瞬考えて宙を見やる。
どうやら記憶をさかのぼっているようだ。
「…そういやあいつ名前は出さなかったな。」
……やっぱり。
心の中で恋歌はつぶやく。
それもそのはずである。
先ほど初めて高野の存在を知り、名前を知った薊なのだ。
そんな高野を簓が知っている確率はやはり皆無。
おおかた簓はちょっとしたイタズラ心で弟に吹き込んだのだろう。
そしてそこにタイミングよく恋歌と話している高野。
…そのあとの行動は彼の性格を考えれば充分納得ができる。
まったくほんとに鈍感というか単純というか…。
(ここまで鈍いと呆れてきちゃう…)
はあ…、とため息をつく恋歌の横ではまだ薊がなにやら息巻いている。
「でも俺はピンと来たんだよ!一目見て絶対あいつだと思ってさ。
…でも、そんな最低最悪な性格のやつでもお前が好きって言うなら俺は…」
そう力説する薊の顔は真剣そのもので。
…最低最悪…。
「ぷっ!」