〜再会〜 58
「え?兄ちゃんが?」
新たに思いもよらぬ名前が飛び出した事でやっと理解できたと思ったのにまた話わからなくなる恋歌。
「…ああ。お前に好きな奴がいるって話を出したらそいつがどんな奴か。知ってるし見たこともあるって言いだしてさ」
そう言うと はあっ…と指に息を吹きかける。
薊の指先は冷えて真っ赤だ。
「その性格についての内容があまりにもひどかったから…お前がそんな奴と付き合いでもしたらって思ってさ…」
訳が分からない、
と恋歌は思っていた。
ささらは自分が薊の事を好きだと知っていたはずだ。
それに冷静に考えて大学生の彼とご近所さんでもない高校生の高野君との接点は皆無だ。
一体なにがどうなってそうなるのだろうか。
「え、ちなみに兄ちゃんは高野君のことどんな人だって薊に言ったの?」
簓と高野は面識がないはずだとは思いながらも恋歌は一応聞いてみることにした。
「あー…なんか、最悪な感じ」
恋歌に気を使ってか薊は言いにくそうに呟く。
「さいあく?」
聞き返す恋歌を薊はうかがうようにちらりと見やると、やはり言いにくそうに切り出す。
「ん…顔も運動神経も頭も良くて」
「うんうん。」
恋歌は記憶の中にある高野のイメージを引っ張り出してみる。
たしかサッカー部で運動神経は良いと噂で聞いたことがある。
しかし勉強の方はどうだっただろうか。
典型的な体育会系で勉強についてはめっきりだったような…
「でもその話じゃ良いとこばっかりじゃない。どこが最悪なの?」
「いや…お前が知ってるかどうか知らないけど、あいつ、彼女がいるかどうかすらはっきりしないんだろ?
それに極度の鈍感野郎でお前の気持ちにすら気づいてないらしいじゃん」
そう言って恋歌の反応を見るように視線を向ける薊に、恋歌はただ首を捻るしかない。
恋歌の記憶が正しければたしか高野には彼女がいたはずだ。
校内でも可愛いと有名なサッカー部のマネージャーの。