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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 51

─…
『パパとママは、いま晩ご飯のおかいものに行ってるの。今日はありすの誕生日だからきっとごちそうよ!』
─…
「ニコニコ笑いながらそう言ったんだ、あいつ。」
薊はぎゅうっと唇をかみ締める。
「兄貴は一瞬目を見開いてたけど、すぐに無理やり笑顔を作って亜莉朱に話を合わせてた。兄貴はあの頃から大人だったから‥今はその方がいいと考えたんだろう」
薊の話に耳を傾けながら、確かに兄ちゃんならそうするかもしれない、と頭の隅で恋歌は思う。
「だけど俺は、何故かそれじゃいけないって思ったんだ。何故だか分からないけどそんな亜莉朱に俺は無性に腹が立って、兄貴の手から無理やり亜莉朱の手を奪って家の中に連れていった。急に入って来た俺達に、大人はびっくりしてたけど俺は構わず亜莉朱を2人の遺影の前まで引っ張っていった。するとそれまではされるがままだった亜莉朱は急に抵抗しだしたんだ。かたくなに遺影から目を逸らし、俺の手から逃れようとした」
─…
『…やッ!!』
『嫌じゃねぇ。ちゃんと見るんだ』
薊の手に力が入る。
『いやっ!』
亜莉朱は目を閉じて開けようとしない。
思いも寄らぬ事態にまわりの大人達はざわめき出し、ついに薊を取り押さえようとしたその時、部屋に薊の大きな声が響き渡る。
『お前のパパとママは死んだんだ!もう帰って来ないんだよ!!』
し・・・ん
薊の声に室内のざわめきが水をさした様に静まる。
亜莉朱は薊に手首をつかまれたまま固まっていた。

『…ったもん‥』

沈黙の中、注意していないと聞き逃してしまいそうな声と同時に亜莉朱の手首をつかむ薊の手に冷たいモノが落ちる。

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