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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 50

薊の瞳には多分今は過去しか映っていないだろう。
あの時の彼らを思い描き、後悔というなの重荷を背負っているのだろう、恋歌には…想像も出来ない気持ちだ。
「流石だよ、兄貴は。どうして良いか分からない俺を後目に、亜莉朱を外へ連れ出し徐々に言葉を取り戻させた。」
 薊の、眉間に皺を寄せた表情。
その顔を見ている恋歌もまた、眉間に皺を寄せる。
「薊…。」
 キュッ。
薊の服の裾を握りしめ、恋歌は彼の名前を呼んだ。
「悔しかった。何も出来ない自分が…だから、だから亜莉朱に笑顔を取り戻させる事は、俺がやりたかった。」
今の薊に恋歌の声は届いていないだろう。恋歌が服の裾を握った事もおそらく気付いていない。
恋歌はそれを少し寂しく感じたが今は黙って薊の話を聴いていようと思った。
「亜莉朱は兄貴のおかげで尋ねれば返事をするくらいにまでなってた。だけど‥しばらく兄貴と話した後、兄貴が亜莉朱の両親について亜莉朱に尋ねた時…」
薊の頭の中に、あの時の亜莉朱の声がこだまする。

『‥つらい?なにが??』

薊は目をつぶり、そのときの事を思い出していた。
─…
『え‥?だからお父さんとお母さんがいなくなって辛いと思うけど‥って‥』
『なんで?いなくなったってなに??パパとママはいなくなってなんかないよ』
慰めるために簓の言った言葉にきょとんとしながら亜莉朱は答える。
─…
「兄貴は話が掴めずに戸惑っていたみたいだけど、兄貴の横で聞いていた俺はなんとなく嫌な予感がしたんだ。なんだか無性に怖くなって、走って母さんの所へ帰りたくなる様な…なぜだか分からないけどいつもより鼓動が早くて汗が止まらなかったのを覚えてる」
そう言った薊の手が汗でびっしょりと濡れていた事に恋歌は気付いていたが、何も言わずに改めて薊の手は強く握り返した。
「そして…その予感は的中した」
薊は目をより強くつぶり顔を歪ませる。そんな薊の表情に恋歌の鼓動も自然に高まっていく。

「…『パパとママはもうじき帰って来る』」

─ドクンっ
恋歌は思わず震える手を口にあてた。
「…っ。‥そう、言ったの?亜莉朱さんが‥?」
うまく言葉が出ない恋歌に薊は何も言わず黙って頷いた。

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