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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 38

「それでもそいつが好きなんだって恋歌ちゃん。僕よりも、ね。」
簓はわざとらしくはぁっと溜め息をつき
「あんな奴よりよっぽど僕の方が良いと思うんだけど」
人の好みはわからないねぇ、と言った。
「…っ兄貴‥」
「ん?なに??」
簓の言葉に薊の体がピクリと反応する。
「そいつの事‥知ってんのか‥?」
「あぁ、知ってるよ。見た事もあるし。」
さらりと言う簓に薊はごくりと喉を鳴らした。
「どんな奴だよ…?」
薊の問いに簓はクスリと笑ってから
「う〜んとね…顔も整ってるし運動もできる。おまけに勉強もできるみたい。でも性格が…さっき言った通り。」
簓の笑みに少し不機嫌になりながら薊は
「‥‥タチ悪りぃ」
とボソッとつぶやいた。そして
簓と目を合わせず
「もういい。寝るから出てけ」
と言うと簓に背を向けベッドに寝転んだ。
「はいはい」
そんな薊の態度に簓は素直に部屋を出て行く。
「おやすみ薊…」
心なしかこの状況を楽しんでしまっている自分を弟に悟られない様にしながら。

―パタンッ


薊は視線だけを扉に向けて閉まるのを確認すると視線を天井に向けた。
(隣りのクラスに兄貴が言ってたような奴なんかいたかぁ?いないよなぁ…)
考えれば考える程に薊の頭の中で、姿の見えない恋歌の意中の相手にメラメラとした何かが火をつけはじめる。
チッと舌打ちをして体を横に向けると、薊の視界に恋歌の部屋の窓が飛び込んで来た。

が…咄嗟に背中を向けてしまう。
「俺には関係ねーよ…」
ポツリと呟いてみるが、薊の胸にモヤモヤしたものを残したまま夜は更けて行くばかりだった…。
同じ頃、簓は浴槽につかりながら思いを巡らせていた。
「…ふぅ‥」
溜め息を一つついた後両手で湯をすくって自嘲気味に笑う。
“薊、心あたりあるんじゃないの??”

「ふっ‥ホントに僕は意地が悪いな‥」
“あたしは…やっぱり薊が好き”
“薊じゃなきゃだめなの”
「……」
“あいつ…隣りのクラスの奴が気になるって言ってた”
パシャン─‥
すくった湯を自分の顔にかける。
「…っ情けねぇなぁ。」
そう言った簓の顔は、もう笑ってはいなかった。



「…あ。兄ちゃんの部屋も電気消えた。」
その頃恋歌はと言うと自宅の縁側に座り、ぼんやりと隣りの春日谷家を眺めていた。いつもなら恋歌が寝る頃も点いている薊の部屋の明かりもめずらしく今日はもう既に消えている。
「…薊‥」
どうして今日はあんなに機嫌が悪かったんだろう‥まだ鞄の事怒ってるの?あたしが何事もなかった様にご飯作りに行ったから?そもそもなんで薊は鞄を兄ちゃんに預けただけであんなに怒ったんだろう‥。
考えれば考える程薊の心境は分からなくなるばかり。

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