〜再会〜 37
「………」
二人は睨み合ったまま沈黙の中、聞こえるのは未だに降り止まない雨の音だけだった。
その沈黙を先に破ったのは…
簓だった。
「僕、恋歌ちゃんと付き合う事になったから。」
「…っ」
薊の目が大きく見開かれる。
「‥なーんて。嘘だよ。本気にした?」
少し間を空けた後そんな薊に簓は無表情のまま、べーと舌を出し言った。
「てめぇ‥っいいかげんに「フられたよ。」
「は‥」
自分が怒鳴り終わる前に告げられた言葉に薊は呆然とする。
「フられましたよ。きっぱりとね」
「ふ、ら‥?」
「フ・ら・れ・た・の!!何度も言わせるなよな。」
まだ状況が理解できていないであろう薊に簓はわざとらしくそっぽを向き「てゆーか重いんだけど。」
と言った。
「あ、あぁごめん…」
まだぽかんとしながら薊は素直に馬乗りになっていた簓から体を離した。
「え‥なんで…いつの間に‥」
頭がうまく回らないのか断片的に薊は簓に問う。その瞳は泳いだままだ。
「言ったのは昨日かな?あーぁ、人殴ったのなんて初めてだよ。こんなに手が痛いなんてさ。」
なんでも無い事を言うかの様にさらりと言うと薊を殴った方の手をなでる。
「な‥んで‥」
「恋歌ちゃん好きな人がいるんだって。薊、心当たりあるんじゃないの??」
信じられないと言う様な表情の薊をちらりと見やって簓は意味ありげに言った。
「あ‥っ!!」
『やっとかよ…』
何か思い当たったらしい薊を見てふぅっと溜め息をついた簓だったが…
「あいつ‥隣のクラスの…」
「はっ?隣のクラス??」
「そう‥隣のクラスの奴が気になるって言ってた‥」
隣の家の間違いじゃなくて?と思った簓だったが薊の表情からしてそうではないらしい。
『そんな事初耳だけど‥少し様子をみてみるか‥』
「‥恋歌ちゃん本人がそう言ってたのか?」
「あぁ‥。」
さぐりを入れているとは知らず呆然としたまま薊は素直に答えていく。
「それでお前はなんて答えたんだ?」
「そうかよって‥それだけ‥」
『ふぅん‥なんとなく掴めて来た…。おおかた恋歌ちゃんが勢いで言っちゃった事を薊が信じきってる‥ってとこかな』
「あーそう言えば、恋歌ちゃん言ってたかもなぁ」
「…?」
わざとらしく顎に手を当てて言う簓の方に目を向ける薊。
「なんでもその好きな人ってのが鈍い奴らしくてさ、まったく恋歌ちゃんの気持ちに気付いてないみたいなんだよね。しかも彼女が居るのか居ないのかもあいまいらしくて。」
そこまで言ってちらりと薊に目を向け真剣に話を聞いているのを確かめると簓は話を続けた。