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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 34

結局簓に気持ちを伝えられないまま恋歌達は夕食を終えていた。そして今恋歌はと言うと夕飯の食器を洗いながら自分の不甲斐なさを責めていた。
「はぁーーっ」
結局言えずにここまで来ちゃったなぁ…でも兄ちゃんの顔見るとなかなか‥でもでもこのまま言わない訳にもいかないし…でも薊の前で言う訳にも‥あ〜もうなんでこんなにうまくいかないのよぉぉ!!
「‥ちゃん、恋歌ちゃんっ」
「わっ?!」
我に返るとすぐ横に悩みのタネ、簓の姿があった。
「やっと気付いた。一人で百面そうしてたけど何考えてたの??」
ふっと笑いながら問う簓の質問に正直に答えられるはずもなく、恋歌は
「なっなんでもない!」
とごまかした。
「そ?ならいーけど。洗い物僕も手伝うよ。」
そんな恋歌をよそに簓ニッコリ笑って腕まくりをして見せた。
「えっいーよ兄ちゃ‥」
「いいからいいから。」
「でも‥」『薊の前でそんな…』
しかし簓の優しさをそれ以上突き放す事ができず結局は恋歌は簓に押し切られてしまった。

暫く困惑の表情を浮かべて俯く恋歌に簓が切り出す…
「恋歌ちゃん…言ったはずだよ?僕は君を悩ませるつもりなどない…僕なりのやり方で君を振り向かせてみせるって…」
「兄ちゃっ…」


―バタンッ!!


まるで恋歌の言葉を遮るかのように、ドアの閉まるもの凄い音がリビングに響き渡った。
その勢いに恋歌は思わず肩をビクつかせる。
『……薊?!』


どーして……?
なんでこうなるんだろう…悲しくなる…
切なくなる…


二人を残したまま薊はリビングを出て行ってしまった…。

「……ちッ」
薊は見ていられなかった。あんな2人を。
会話の内容は聞こえなかったが恋歌に優しくほほ笑みかける簓にそれに答える恋歌。
それだけで腹を立てるなんて大人気ない事は分かっていた。一人部屋を飛び出し舌打ちをするなんて。
─見たくないから?自分は出来ないから??─
そんな簓の声が聞こえた様な気がした。


『このままじゃダメ‥あたしがはっきりしないと。』
薊のいなくなった居間で恋歌は心の中で呟く。
‥─やっぱり言おう。今すぐはっきりと。
「兄ちゃん。」
簓をまっすぐ見て恋歌は言った。
「…なに?」
その空気を悟ったのか簓は手を止めず恋歌と目を合わせる事無く答えた。
食器を洗う音だけが居間には響いていた。
「あたしは…やっぱり薊が好き。」

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