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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 4

 そう思っても、どうしても素直に薊と向き合えない。
 兄ちゃんとはあんなに素直に話せるのにね…

 終業のベルが鳴るのと同時に、居たたまれない気持ちに弾かれるように、恋歌は教室を飛び出した。
渡り廊下は、全くと言っていいほど人気はなく…ただ涼しい風が吹き荒れるだけ。
「さむっ…。」
 少し震える肩を両手で抱えるように抱きしめると、開いてる窓を少し閉めた。
「…あれ?薊だ…。」
 恋歌の視線は窓から裏庭の方へと降りる。
何をしているわけではなく、唯のうのうと歩いている薊。
なにをしているんだろう…
恋歌は少し、首を傾げた。
 コートひとつ羽織らずに、バカみたいに寒々しい格好をしている薊。
 涼しい顔で立ってはいるが、そんな姿を目にしては、慌ててそこまでやって来たことは一目瞭然だった。
『何やってんだろう、アイツ』……。
 再びそう思いながら、窓の桟に頬杖をついた。
 ポケットの手を突っ込んで、セピア色の髪の毛をヒラヒラと風任せになびかせながら、白い息を吐き、少し俯き加減歩く薊の姿をぼんやりと目で追っていた恋歌は、急に、ハッと顔を上げた。
『もしかして、アイツ…私のことを探してる?』もしかしたら、教室を飛び出した自分の事を心配して、追いかけて来たのではないか…そう感じて、もう一度真下の薊を見下ろした恋歌…
 しかし、その期待は、眼下に広がるワンシーンにかき消された。
 恋歌の目に飛び込んできたのは…
 
恋歌の目の前に広がる…まるで映画のワンシーンかのょうな景色は全てモノクロへと変化する。
心に秘めてた淡い期待を真っ白にしたのは…薊の視線。
危なく話し掛けようとした。今、何が起こっているのか…状況把握能力に欠ける恋歌の頭では難しい事だった。
「薊!!」
 か細い声。その声の持ち主は颯爽と薊に駆け寄り…がしっ…抱きついた。
恋歌の目は一瞬白黒し、瞳を瞑る。
「…今の、何?」
ゆっくりと、瞳を元の位置に戻す。状況は何も変わってない。
「急に抱きつくなって前から言っといただろ。」
 言い方が、素っ気ない。薊が少し怒ると、こんな話し方を良くした。
恋歌と話す薊の言い方は…いっつも素っ気なかった。

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