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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 30

《ピンポーン》
「あ、恋歌ちゃんかな?」
簓は何事も無かったかの様にパタパタと玄関へ向かう。
「‥‥」
そんな兄に背中を向けた形で薊は何も言わずに座って居た。
「ごめんね兄ちゃん、色々支度してたら遅くなっちゃって‥」
嘘だ。俺と会うのが嫌だったんだろう?
部屋に入って来る2人の会話を背中で聞きながら薊は心の中でつぶやく。
「いいんだよ、それより突然呼び出したりしてごめんね?時間‥大丈夫だった?」
何が大丈夫?だ。自分が言えば断られない事分かってやったくせに。今兄貴の顔は間違いなく満面の笑みだろう。そんなの見なくても分かる。

「あ、そんなの全然大丈夫‥」
いつもそうだ。16年間ずっと。俺だけがのけもので。恋歌はいつも兄貴が一番で。だから俺だけを見て欲しくてついイタズラしたり‥。やればやる程嫌われるって事分かってたのに‥。
「薊??」
「!!」
急に名前を呼ばれて薊は我に帰った。
「どうしたの‥ボーッとして‥具合でも悪いの?熱があるとか‥」
薊の前に恋歌がしゃがみその額に触れようとした瞬間、薊は勢い良く立ち上がり
「風呂、入って来る。」
と言った。
「え‥でもまだ沸かしてないよ‥?」
薊は見上げる様に言う恋歌と目を合わせる事なく
「シャワーで良い。」
と言うと廊下へと消えて行った。
「どうしたんだ薊の奴?気にしなくて良いからね恋歌ちゃん」
簓は不思議そうに首をかしげた。
今‥避けられた‥??
恋歌は薊が消えて行ったドアを見つめながら呆然としていた。
気のせいなんかじゃない。あたしが薊に触れようとしたから‥。俺に触るなと聞こえない声で言い放たれた。だって家に入ってから今まで1度も薊と目が合わない。


「‥‥」
まずいな。。僕の言葉も届いていないみたいだ。それほどショックだったのか?薊に避けられた事が。まぁあれだけ露骨にやられればヘコむか。…ホントやっかいだな。でも薊、気付いてる?これで僕が恋歌ちゃんと2人きりになれたって事。

「恋歌ちゃん、平気??」
「えっ?あ、うんっホンット薊って自分勝手だよねぇ」
簓の言葉に我に帰り慌てて返事を返す恋歌。
「そうじゃなくて。」
「え??」
いつもと違う簓の表情…この顔は見た事ある。あの時と同じ顔…。
まっすぐに恋歌を見つめ…そう、恋歌に気持ちを告げた時と同じまなざし─‥
「そうじゃなくてさ、僕と2人きりって平気かなぁと思って。」
改めて簓にそう言われて恋歌の頭に昨晩から今朝にかけての一連の出来事がフラッシュバックした。
「あ…っ」
そうだ。あたし兄ちゃんにキスされたんだ!そしてそれが兄ちゃんの気持ちで…。
薊に気を取られてつい忘れていたが、一気に色々な事を思い出して恋歌は急に簓を意識してしまう。

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