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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 29


さっきから受話器を握り締めている簓の手が怒りで震えているのがわかる。

「…っざけんなよっ!…んなの、信じられっかよ!」と薊は簓の肩に掴みかると簓をこちらに向かせ襟元を握り締めた。
そんな簓の顔からは、いつもの穏やかさはまるでなく、鋭い眼差しが薊に突き刺さる。
それは明らかに弟に向けられているものではなく、敵意剥き出しで薊に向けられていた。
「薊が信じられないと言うならそれでもいいさ。
でも、これからはいくら薊でも容赦しないからね」
簓は冷たく言い放つと薊の手を退かして襟元の乱れを直した。
そして初めて見る兄の姿に目を見開き固まったままの薊をよそに簓はくるりと向き直り一から電話をかけ始めた。
トゥルルル‥トゥルルル‥
「はい、もしもし」
電話に出たのは恋歌の母だった。


「あら、まぁそうなの?なら早く言ってくれればいいのに!いーのようちの事は」
一体誰と話してるんだろ。お母さんの声、いつもより1オクターブ高くなった。恋歌は不思議そうに嬉しそうに受話器に話し続ける母を見やる。なんか‥嫌な予感がする‥。
数分後、「じゃあ、すぐ向かわせるから。」
の言葉を最後に、母は受話器を静かに置いた。
「〜という事だから恋歌、春日谷さんのお家に行ってらっしゃい。」
 笑顔で、でも反抗できない雰囲気をかもし出して母は言った。
「えっ!?」
 驚きに目を見開く恋歌のその瞳に、何か文句ある…とでも言うかのような母の目が光る。
「…いえ…。」
 納得のいく理由も分からないまま、恋歌はささと身支度を整わされ、まるで何十キロもの鉛がついてるかと思う程思い足枷を引きずりながら家を出た。
「行ってきます。」
 力ない恋歌の声。母は笑って手を振って、そんな我が娘を見送った。
恋歌はこの日、生まれて初めて母の笑顔が恨めしかった。
たかがお隣りの春日谷家のにどれほどの時間を費やしただろう…。
一歩進んでは立ち止まり、今度は一歩下がったり…。そんなこんなでやっと門の前まで辿り着いたのだが、ここでまた暫く考え込む。
そして、やっと決心し一つ深呼吸をついた恋歌は恐る恐る人差し指をインターホンに近付けた。
ふるふると震える指先は、なかなか目標が定まらずにボタンをかすめる。

何やってんのよ、私……。
そう心の中で呟きながらふーっと溜息をついた。
『普通に普通に。何で緊張してんだろ。』とブツブツぃぃながら押した

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