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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 26



――次の瞬間…

フワッと柔らかい感触と共に恋歌の視界いっぱいに簓の顔が飛び込んできた。

「…!?…」

あまりに突然の出来事で何がなんだかわからずにすっかり恋歌は硬直してしまっている。
そしてスッと簓が優しく唇を離し
「これで違いがわかるんじゃない?」
と優しく恋歌に微笑むと簓は恋歌の部屋を出て行った…。

『えっ?…今の…何…?
何なの…兄ちゃ…』

恋歌はそっと自分の唇に触れ先程の感触を確かめてみる。まだ感触が残っている事が先程の出来事が現実だと恋歌に知らせているようだった…。
薊では無い人にキスをされたショックよりも、何倍も何倍も驚きの方が大きかった。

 何が起こったの…?

簓が帰って数十分経っても、その驚きから立ち直る事は出来ずに、無い脳みそをフルに使って考えても、到底簓の考えている事は分からなかった。
「兄ちゃん…?」
 もう既に影さえ見えないドアへ向かって、小さな小さな声で問い掛けた。
 『これで分かった?』と聞いた簓の言葉の意味を考えるよりも…簓自身が気になって、恋歌は瞳を丸めた。






──眠れなかった…──
翌朝、葵家のリビングには目の下にクマを作った恋歌が居た。
無理もない。昨晩初恋の人にいきなりキスをされたのだから。しかも彼は今の想い人の実の兄…。

『これで違いが分かるんじゃない?』

昨晩の簓の言葉が頭の中でぐるぐるまわる。。。
「もぉ‥なんなの一体…」
恋歌は頭を抱えて溜め息をつく。一連の出来事で出尽くしたのか、涙はもう出て来なかった。そんな恋歌をよそに時間はどんどん過ぎてゆき…
「わっ!!もうこんな時間!!」
気がつくと時計の針は登校時刻を指していた。

「いってきまーす!!」

恋歌はなるべく元気に玄関を出る。元気な振りでもしないとやってられない。
そして一歩踏み出した時、お隣りの春日谷家から人が出てきた。
こちらに気付いたその人物と目が合う…。

「兄ちゃ…」

そう…それは簓だった。
今、恋歌の頭の中を掻き乱している張本人。

「おはよう、恋歌ちゃん」
優しく微笑みかけるその笑顔はこれまでと何も変わらずに恋歌に向けられている…。
昨日、恋歌の唇を突然奪っておいて何事もなかったかの様に爽やかな笑顔を振り撒く簓に恋歌は困惑してしまう。
「にぃ…っ」
覚悟を決めて昨晩の事の理由を問いただそうと恋歌が簓を呼んだのと同時に簓が口を開く─…
「僕は好きでもない子にキスなんてしないから。」
まっすぐに恋歌を見据えた簓の視線はいつものそれとは明らかに違うものだった。
「あれは僕の気持ち。…だから‥謝らないよ?」
そう言うと簓は悪戯っぽく笑った。
訳が分からなかった。
あのキスが兄ちゃんの気持ち…。兄ちゃんは好きな子にしかキスしない…。と言う事は?!
ぽかんとしている恋歌を見兼ねたのか簓は「この意味‥わかるよね?」と恋歌の瞳を覗き込んだ。

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