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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 17


―ダッダッダッダッ

恋歌は口を尖らせたまま薊の制服の前まできて手をかけようとしたのだが、そこから先に進めずに暫く制服とにらめっこしついる…。
「…もぉ、いやっ!」

今度は、その場にしゃがみ込んでしまった。
情けない……。
膝の間に顔を埋めて足元をジッと見据えていた。
尖らせていた口許を今度はキュッと結んで、下唇を噛む。

情けない……。

もう一度そう心で呟くと、目頭がグッと熱くなって、じわっと目許に雫が浮かぶ。
みるみるまに視界がぼやけ、睫毛に引っ掛かっていた泪がひとしずく、ポタリと足元に落ちた。
一度落ちた泪は止まる所を知らない。
一滴、また一滴と零れて、後は絶え間なくカーペットを濡らしていく。
その様を恋歌はどうする事も出来ずただ呆然と見つめていた。


ナンデ…ナイテイルノ?…。


そう、心の奥底で誰かが呟くのを漠然と聞きながら。



『制服‥返しに‥行かなきゃ』
ひとしきり泣いた後、恋歌はつぶやき涙を拭い薊の制服に手をかけた。
ハンガーから外すとふわり、薊の香水の香りがする。
ダメだ。この香りは。泣いてしまう。
また溢れそうになる涙をぐっと飲み込み恋歌は制服を持つと隣りにある薊の家へ向かった。
家を出る前に洗面台へ行き鏡を覗く。
『‥泣いた事、分っちゃうかな。。』
なぜか薊は昔からあたしが泣いた跡を見つけるのがうまい。隠せない。薊には。
ガチャ。
ドアを開けて外へ出る。少し肌寒い。早退とは言え学校から帰って来て数時間。もうすっかり夜も更けていた。
『…薊‥居るかな。』
薊の家の前まで来て、昔はここを【ササラ】の家と呼んでいた事を思い出しいつの間にか薊を中心に世界が回っている事に気付き恋歌はふっと笑った。

深呼吸を一つして【薊の】家のインターホンに手を伸ばす……
指先がインターホンのボタンに触れるとピクリと体が震え思わず指を引っ込める。
首を横に振り怖気づく気持ちを奮い立たせ再び指をボタンに…。が、その指先はフルフルと震えるばかりで力が入らない。
「ッ…ダメだ。勇気が沸かない」
遂には手を引っ込めてしまい、胸に抱えた薊の制服を抱き締め顔を埋めた。
鼻を擽る香水の匂い…薊の匂い。
甘ったるくもなく、スパイシー過ぎもしない…。
そんな心地良い匂いに包まれ、緊張が解れていく。
薊の香りを大きく吸い込んで、吐き捨てると同時に、恋歌の顔からフッと笑みが零れた。
「香水なんか付けて…色気づきやがって……――」
恋歌は無意識にそう呟いて、クスッと穏やかに微笑んだ。
その時……。
「お前、なに人の制服の匂い嗅いでニヤニヤしてんの?」
恋歌がハッと顔を上げて振り返ると、玄関先の門に背を凭れ腕を組んで俯き加減。
視線だけを此方に向けて上目遣いに恋歌を見る。
それは紛れもなく、恋歌が鼻を摺り寄せニヤケていた匂いの持ち主だった。
「薊ッ!?」
瞠目…そうして焦燥…。
言葉を失い立ち尽くす恋歌に薊は酷薄の笑みを浮かべ、ひと言呟いた。

「変態」




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