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〜再会〜
恋愛リレー小説 - 初恋

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〜再会〜 16

『‥送る』そういってあたしの前をスタスタと歩いて行く薊。
…どうして優しくするの‥?あたしは薊に消えない傷を負わせた‥体にも心にも‥。忘れた訳じゃないだろうに。
痛みに鈍感で、ひどい言葉を吐いたあたしを…。
あたしは涙が流れるのを堪え切れなかった。
あたし…薊が好き…。
こんなに強く想った事は今までなかった。
薊に好きな子が居ても良い。
あたしの事好きじゃなくても良い。
想いが伝わらなくても良い。
それでも側に居たいと想うのはワガママですか?
自分に甘い証拠ですか??
『…恋歌?』
薊の学生服を握り締め、いつまでたってもついて来ないあたしに気付いて薊が振り返った。
今にも泣きそうなあたしの顔に気づいて、薊がワイシャツの袖であたしの瞳を軽くこする。
「何でも…ない。」
 そう呟いて首を振るのでいっぱいいっぱいだった。
薊の視線が痛くて今にも逃げ出したかった。でも、肩に捕まれた薊の腕がそれを許してくれない。
「何でもないわけねぇだろ、言えよ。」
 薊の手に力がこもる。
痛っ、  あたしの声に驚いたのか一言の謝罪を零し、肩から腕をはずした。
「あ…。」
 何か言わなきゃ、この状況から逃げられない…。
「隣の…」
 は?
 薊の顔が歪んだ。何が云いたいのか分らない様子。
「隣のクラスの子が…気になってるの。」
『…そうかょ。』
それだけ呟いて薊はくるりときびすを返してまた前を向いて歩き出した。

…これでいいんだ…
あたしは胸の中で呟く。
気になる子なんて居ない。居る訳ない。想うだけで涙が止まらないなんてあたしにはもう薊以外考えられない。
でも薊には好きな子が居る。あの白い肌の。茶色い巻き毛の。
自分からキスしちゃうくらいだもん。それに薊はあたしに『俺の恋路を邪魔するな』って言った。好きな子に決まってる。
だからあたしはこの想いを心に秘めておかなくちゃいけない。きつく鍵を掛けておかなくちゃいけない。
あたしには薊に好きだと言う資格なんてない。言っちゃいけない。あんなに薊を傷つけたあたしには──。



「……」
恋歌はベッドサイドに腰を落して一点を見つめたまま腕を組み首を傾けていた。
しかし徐に大きく溜息を付き『疲れた…』と呟き肩をガクリと落とした。
だってもう、2時間近くこうしているのだ。
恋歌の視線を釘付けにしているのは、ハンガーに掛かった薊の制服。
「あー…!私に…どうしろって言うのよーー?」
一度大きく叫んで頭を抱えた。

しかし、どうもこうも…。

恋歌は、どんなに思案してみても、やっぱり自分で返しに行くしかないのだという己の出した結論に、眉を顰める。
ブスッと口を尖らせた膨れっ面で、わざと大きな音を立てて制服に歩みよっていく。


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