〜再会〜 14
口を開くと、「好き」って言葉がこぼれ落ちそうで思わず口を塞ぐ。
「…やっぱり?」
軽く語尾を上げて、深い瞳を一瞬にして歪ませる。
答えられない、首を縦にも横にも振れない。
薊の所為、でも。 自分の所為。
あなたへの気持ちに今気が付いた…自分の所為。
「ごめんな。恋歌」
それだけ告げると薊は、窓から姿を消した。
薊の身に纏っている香水の香りだけを残し…。
「どうしてよぉ…。」
一筋の涙が恋歌の頬を伝う。とめどもなく溢れてくる涙。恋歌はそれを止めることができず、布団にくるまる。
どれくらい時間がたっただろうか。
「恋歌。…大丈夫?」
母親の声で目を覚ます
「あんた最近、ご飯あまり食べてないでしょう。おかゆ作っておいたから。ちゃんと食べなさい。」
「あ。…はい。」
母親が部屋から出ていくと恋歌は起き上がり、おかゆを食べた。
「あったかぃ。」
なんだか心が満たされるような気持ちになる。
明日は…学校へ行こう
恋歌はふと思い、深い眠りについた。
学校へ行こう。 そう誓った次の日の朝。不登校気味でだるい体を一気に前の生活にムリヤリ戻す。
「休んでもいいのよ?」
優しいお母さんの声が異様に哀しくて、涙がこみ上げてくる。
「大丈夫だよ。」
ただ、自分の所為だから。
自分の不甲斐なさに気が付くと涙が零れそうになる。
必死にそれを押し込めて、制服に身を包む。
よし。
「戦闘態勢万全。」
この気持ちに気が付く前は普通に出来た。
薊に普通に接した自分を思い出し、家を飛び出す。
「行ってきます。」
朝、学校で「おはよう」とだけ薊と声をかけあった。薊は転校してきてからクラスの人気者で、隣の席である薊の席は休み時間はクラスメイトが集まって騒いでいる。その中には女の子もいる。薊が女の子の話に笑っている。からかうように女の子の髪をクシャクシャにしてる。友達と話てるのに、薊に目が耳が行っている私がいる。苦しい…いつも通りにできるのかな。見てるだけでこんなに胸が痛い。だんだん気持ち悪くなってきた。昨日まで体調最悪だったしな…。
「保健室行ってくるね。先生にいっといて。」
友達に告げて保健室に向かった。
何て弱い…自分。
弱すぎる自分に呆れるくらい。
保健室の真っ白なベッドに潜り込み、一人で静かに涙を流した。
失恋のショックで?
薊へのヤキモチで?
一体何に対しての涙なのか全く分からないけど…とにかく、止めどなく流れる涙を拭う元気もなかった。
ガラガラ…
しばらくすると、静かに扉が開く音がする。
「失礼します。あの…、友人が保健室に来たって。」
!?薊っ。
聞き慣れた薊の声が、耳の中で静かに廻る。
「あぁ、今そこで寝てるわよ。」
先生が指さす先に寝てるのは勿論自分。
薊が、来てくれた…?