〜再会〜 12
次の日、あたしは薊と目を合わせること無く過ごした。
そんなあたしの様子に気が付いたのか、薊も決してあたしに話し掛けようとかはしなかった。それが逆に、淋しかった。
心の中にぽっかり大きな黒い穴が空いたような気分がして…
今までにない感情があふれ出した。
ふと目の端に映る薊の姿を見るたび、心臓が一度は高鳴る。
そして…恋歌は初めて気付くのだ。
自分が薊に恋をしてる…と。
恋?…
あの無愛想で、斜に構えていて、ちっとも可愛くない…言うなれば『天上天下唯我独尊』という言葉がなにより似合うあの男に…恋?嘘でしょ?
そう抗う自分もいて…
恋歌は、ただ、ひたすら頭を抱える
ふと……
頭を過ぎった記憶…
幼い時の記憶が…再び蘇る
自分の代わりに材木の下敷きになり、自分の代わりに大きな傷を負ってしまった薊……
あの、首筋から覗く痛々しい赤い跡が、恋歌の脳裏を過ぎる
あの傷…残っちゃったんだ…。
同じようなことを思い…恋歌はふと顔を上げた。
あの時、薊は何であたしを守ってくれたんだろう。
恋歌は眉間に皺を寄せた。
あの日の午前中、あたしと薊は確か…喧嘩してたんだよな?
脳裏に残る、微かな記憶。
喧嘩の原因?
そんなの覚えていない…きっと他愛もないこと
だって、いつもそうだったから……
そして、私はいつも薊に言ってた言葉
「なんで薊は、ササラみたいに優しく出来ないの?」
何かというとササラと比較して薊のことを貶していた
恋歌は上げていた顔を再び布団に押し付けて、はぁ…と溜息を付いた
私は酷い女だ……
あんな傷を負わせておいて、その上言葉の暴力…
薊がいつも私に挑発的なところも、ササラを利用して私を試すような事をしたのも、きっと私を憎んでいるから…
私は薊を好きになってちゃいけないんだ…
恋歌は、熱くなっていく瞼をグッと閉じた