〜再会〜 11
「…」
「…」
風が草を撫でる音だけが聞こえる、長い長い沈黙。
「…昨日は…悪かったな」
先に口を開いたのは、薊だった。
恋歌は、足まですっぽりと包まった薊のジャンパーの中で、ギュッと拳を握った。
「なんで?…なんであんな事をしたの?」
やっとも思いで吐き出した恋歌の台詞は、緊張で上擦っていた。
重たい雰囲気が再び流れた。
薊は口を開くことはなく…恋歌もまた、口を開くことが出来なかった。
たった数分の出来事なのに…その沈黙は何十分ものように感じた。
見慣れた家の前で足を緩め、恋歌は一瞬薊を見て羽織っていた上着を手渡した。
受け取った薊は薊で無言のまま。
「…りがと。」
そう呟いて家の門を開ける。…と
「何でだと思う?」
薊は唐突に口を開いた。
「…は?」
びっくりしたのか、ポカンと口を開けたまま恋歌は呆然と薊の顔を見た。
「何で、あんな事したんだと思う?」
数秒、恋歌は何の事だろう…と考え、ようやく思い当たることがあったのか
「分からないから、聞いてるんじゃない。」
と薊を軽く睨みつける。
「…そ、じゃあいいや。」
不快な言葉を残し、さっさと自分の家に入って行ってしまった薊に、恋歌は苛立ちを覚えた。
「一体あいつは何なんだよ。」
何がしたいのか、全く分からない。…確か昔っからそうだった…。
眉間に皺を寄せ、恋歌は玄関の扉を開く。
「お帰り。」
…うん。
ままならぬ返事を吐き出すと、そのまま二階へと歩を進める。
「夕飯は?」
「要らない。」
それだけ告げ、恋歌は自分の部屋に入った。
俯せでベッドに寝転がる…けど、思い出すのは薊のことばかりで…。
恋歌は何度も頭を振って振って、薊の顔を吹き飛ばした。
「何であんたが出てくるんだよぉ…。」
ちらり。と、瞳を窓に向けまた枕に顔を埋めた。