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片思い
恋愛リレー小説 - 初恋

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片思い 7

 

「…………」
夕食までの貴重な睡眠時間を邪魔され不機嫌そのものの僕。
原因は机の上で低い唸り声を上げている携帯。
「誰だよ……」
取り敢えず確認した画面に表示されたのは11桁の数字のみ。
「……面倒だな」
取るべきか否か考えること三秒−−無視する事に決定。

「…………」
五回目の着信。ここまでしつこいともはや清々しさすら感じる。
「−−どなたですか?」
その執念に応え渋々電話に出る僕。
「あ、高坂だけど」
「ああ、城山さんの友達の」
聞き覚えの無い名前も声を頼りに身元を割り出す。
と同時に今日会ったばかりの第一印象最悪な人物を思い浮かべやや憂鬱な気分になる。
「……随分と出るのが遅かったけど?」
明らかに不機嫌な声。少し待たせ過ぎたらしい。
「ずっと鞄に入れっ放しにしてたから」
「ふーん……」
適当に言い訳したけど少しも納得してくれた様子は無い。
ま、別に構わないけど。
「−−で、高坂さんが僕に何か用?」
「……まあ良いや。アンタ今度の日曜暇?」
何なんだ、唐突に?
「……一応」
「あ、そう。だったらさぁ−−」


「映画?今度の日曜日に?」
「そう」
「私とコウちゃんが?」
「そう」
「二人だけで?」
「そう」
「ホントに?」
「そう」
「もしかしてこれってデートのお誘い?」
「……どうかな?」
「もちろんOK。絶対行くから」
携帯越しに嬉しそうな城山の声を聞いて自然と笑みを浮かべる僕。
……高坂雅美、案外友達思いの良い奴なのかもしれない。


「珍しいね。お兄ちゃんが日曜に出掛けるなんて」
「そう?」
城山との約束の日、出掛けを妹に捕まる僕。
余計な事を気取られない様に素っ気なくあしらうが−−
 
「もしかしてデートとか?」
流石は兄妹−−都合の悪い事だけは言葉にしなくても伝わる。
「まあそんなトコ」
とは言え約束の時間が迫る今、下手に嘘をついてかえって手間取る訳にもいかず簡潔に肯定して家を後にする。
帰宅後にあるであろう面倒はまだ考えずにおこう。


「いつもの事だけど−−」
「よし、間に合った」
「−−遅いよコウちゃん」
例の如く定刻一杯の到着に容赦無く不満の声が飛ぶ。
「まだ三分もあるけど?」
そう言って携帯のディスプレイを見せる僕。
因みに待ち受けはカレンダーにしている。
「そういう問題じゃないよ。デートで彼女より遅かったら30分前でも遅刻なんだから」
「そんなモノかな?」
「そんなモノよ」
中々に理不尽な理屈。
少なくとも僕には理解不能だ。
そんな掛け合いを経て不意に差し出される城山の手。
「何?」
「埋め合わせに手でも繋いで貰おうかな、と思って」
「……断固拒否」
流石にソレは周囲の視線が痛い。
「じゃあ今日一日私を名前で呼び捨てにする、なら?」
「良いよ。一度も名前を呼ばなきゃ良いわけだし」
「……性格悪いね」
「性格悪いよ」
今度は彼女の言葉に僕が答える。

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