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片思い
恋愛リレー小説 - 初恋

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片思い 1

−−正直油断していた。


目の前には耳まで赤く染めた少女。
その初々しい態度に、きっと僕同様今迄恋なんてした事無いんだろうな、なんて事が頭を過ぎる。

「返事、聞かせて……?」
沈黙に耐え兼ねたかの様な少女の言葉。
彼女の事は嫌いじゃない−−いや、寧ろ好きな方だ。
だけど多分−−そう多分、恋愛感情は存在しない。
それでも辺りに漂う沈黙が何故か妙に心地良かった−−


「ふー……着いた着いた、っと」
今日もいつも通り時間ギリギリに教室に到着。
独りごちながら自分の席に向かう。
 
「何だ光輝。今日も間に合ったのか」
睡眠の続きをとるべく机に突っ伏す僕に向けられた些か不満そうな声。
顔を上げる事無く応える事無く−−取り敢えず無視する。
「って、朝から無視ですかっ!?」
面倒なので更に無視。
いつもならこれで静かになるハズだった、が−−

「……昨日の事、バラすぞ」

思わぬ一言に勢いよく顔を上げる僕。
「み、御崎、お前何処でソレを……」
震える声が嫌でも相手に動揺を伝えてしまう。
「本人から聞いた」
「マジですか?」
「マジですよ。なんせ−−」
そこで一度言葉を切ると不敵に笑って見せる御崎。
嫌な感じだ。
「−−香奈ちゃんに告らせたの俺だし」
誰にも聞こえない様そっと耳打ちしてくる。
成る程、お前がこの陰謀の黒幕か……
ありがとう。朝から最高のテンションだよ。


僕、真壁光輝と彼、御崎賢吾は県内では結構名の通った、所謂田舎の進学校に通っている高校二年生だ。
元々同じ町内に住む僕等は小中高はおろか幼稚園、更には保育園まで一緒−−結果、不本意ながらそれなりに仲の良い方だと思う。
お陰で常に空回り気味のテンションにも、月替わりの彼女とのケンカの仲裁にも慣れた−−訳が無い。
でもまあ、悪い奴ではない−−かもしれないと思っている。


「しっかし、これで光輝も彼女持ちか」
いつも通り教室−−ではなく屋上で昼食を摂る僕と御崎。
容赦無く照り付ける太陽と極限まで熱せられたコンクリート−−夏休み直前の殺人的な暑さに立ち向かう奴は他に居ない。
これなら誰かに話を聞かれる心配は少ないだろう。
「−−で、十七で訪れた春の感想は?」
「別に」
僕は望んだ訳じゃない、とは流石に言わない。
「ん?珍しく照れてんのか。かわいいとこあんじゃん」
僕の素っ気ない答えを勘違いしたらしい。まあ、当然と言えば当然か。

少しの沈黙の後、不意に御崎の携帯が着信を伝える。
その画面を確認するなりにやける御崎。
「どうした?」
「−−悪い、ちょっと他に約束があるんだった」
そう言うと僕の問いには答えず軽い足取りで屋上を後にした。

何なんだ、アイツ?
明らかに不自然な態度を不審に思いつつも今更教室に戻る訳にもいかず一人黙々と弁当を食べる僕。
暫くして突然僕の背後から一つの包みが差し出された。

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