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片思い
恋愛リレー小説 - 初恋

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片思い 6

「あ、いや、アタシは別に香奈の背が高過ぎる、なんて事は一言も……」
慌てて弁解しようとして寧ろ見事に墓穴を掘る、が−−
「良いの。それは本当の事だし」
「え?」
意外な言葉に拍子抜けした様な声を出す。
背の事じゃない、となると何で不機嫌なんだ?
「何?」
急に城山の注意が僕に向けられる。
余程怪訝そうな顔をしていたらしい。
「いや、何か機嫌悪いみたいだから」
無駄とは思うけど素直に疑問を口にしてみる。
「別に。普通だけど」
口を突き出して側方を向く城山。明らかに普通じゃない。
取り敢えず態度から見て僕が原因らしいけど答えが出てくる気配は無い。
仕方無い。こんな時は−−

「……ゴメン」
理由はともかく素直に謝ってしまうに限る。
「え、ちょっと、真壁君?」
頭を下げているから分からないけど城山が慌てているのは間違いない。
「理由は分からないけど僕のせいで機嫌が悪いみたいだから」
構わずまくし立てる様にする僕。
少し卑怯だけど機嫌は早く直った方が良いに決まっている。

「……か、香奈。アンタの負けだわ」
少しの間を置いて横から聞こえる笑いを堪える様な声。
「ちょっと雅美!私は別に……」
「あ−はいはい、不機嫌なんかじゃないんだよね」
頭を上げて真っ赤な顔で抗議する姿を確認する。
どうやら効果があったらしい。
「−−機嫌、直してくれた?」
「え?う、うん……」
僕の問いに気まずそうに頷く城山。
結局のところ理由は分からずじまいだけど−−まあ良いか。

「それじゃ、また帰りに」
気付くと五限開始まであと三分。
二人に一言声をかけて教室に戻る。

「香奈、アンタの彼氏最高だわ」
「えっ?」
「……ま、ちょっと問題ありそうだけどね」
 

その日帰宅した僕を待っていたのは−−
「お帰りお兄ちゃん」
今年受験生の妹−−和華(のどか)の笑顔の出迎え。
嫌な感じだ。
「やっと彼女出来たんだって?」
やっぱりそう来たか……
「……一応」
早く会話を終わらせるべく至極素っ気なく肯定する。
まあこんな事で引き下がる奴じゃないけど。
「一応、って−−まあ良いや、お兄ちゃんって女の子に興味無いから心配してたんだよね」
大きなお世話だ。大体−−
「お前も彼氏が居たためしは無いけど?」
「私は良いの。可愛いからその気になれば大丈夫」
また出たよ。コイツの口癖とも言える自分は可愛い発言。
家以外では言っていないとは本人の弁だけど正直疑わしい。
「……それじゃまるで僕の容姿に問題があるみたいだな」
「もう、お兄ちゃんの場合は性格に問題あり過ぎなんだって−−友達も殆ど居ないし」
これも口癖。
何故か僕に対していつも説教臭い。
「お前にそこ迄言われたくない」
「あ、後で勉強見てね。お兄ちゃんは頭くらいしか取り柄無いんだから」
強引に会話を終わらせ自分の部屋に向かう僕と容赦無い言葉を浴びせ掛ける妹。
これが我が家の兄妹関係。

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