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片思い
恋愛リレー小説 - 初恋

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片思い 5

それに−−

「−−ちょっと話があるんだけど?」
振り返るとそこにはただでさえつり気味の目を更に吊り上げた御崎の今月の彼女−−水田咲。
「お、咲じゃん。何か用−−」
皆まで言わせずビンタ。
間違いない。修羅場だ。
「ってぇ!何すんだよ!」
「それはこっちの台詞っ!!」
勢い良く立った御崎に再びビンタ。
身長差の為背伸びをしながらなのが少し微笑ましい。
次いで傍観を決め込む僕を一瞥。出ていけ、という事らしい。
仕方ないので速やかに屋上を後にする。
御崎の助けを求める様な目はきっと気のせいだろう。
 

昔から御崎と言う奴はだらし無い。女に関しては特に、である。
以前に何度か触れているが、毎月の様に彼女が変わる。
と言う事はつまり、毎月の様に奴は彼女と別れている訳で−−
その度に何故か結果的に修羅場に巻き込まれる自分の運の無さと人の良さが心底嫌になる。
それでも最近では浮気、二股当たり前。泣かせた女は数知れず−−そんな奴の正当な評価が学校内に定着し、漸く僕も平穏無事を手に入れていた。

にも関わらず強者−−水田咲が現れてしまった。
 
このつり目と茶色く染めたショートがよく似合うミニマムな少女は明るく活発で気が強く口も悪い。
お陰で男友達は多いけど周りは女として見ていない−−自称フェミニストの御崎賢吾を除いては。

そう考えれば二人が付き合い始めたのは当然の事だったのかもしれない−−けど、例に漏れずこの展開。しかも付き合い始めて一週間は新記録だ。
せめてこちらに飛び火しない事を祈ってはみるけど多分−−いや、間違いなく無駄だろう。


「−−そこ、邪魔だよ?」
不意に背後からかけられた声に我に帰る僕。
どうやら教室の前でボーっとしていたらしい。
通行の妨げになると思い急いで中に入ろうとすると、
「香奈なら生徒会の集まりだけど?」
何で城山の名前が……?
思いがけない言葉に声の主を確かめる。
見覚えの無い顔だ−−と言う事はおそらくここは僕のクラスではない。
「アンタ、香奈の彼氏だよね?」
怪訝な顔で尋ねてくる少女。
どうやら返事が無いのを不審に思ったらしい。
「一応そうだけど……」
「ふーん……」
「何?」
遠慮気味に答えた僕を捉らえる無遠慮な視線。
自然と言葉の響きが刺々しくなる。
「まあまあかな。流石マニア受けはするメガネ君。でも−−」
言いながら間合いを限りなくゼロにしてくる。
何なんだ、コイツ?
「−−愛想は最悪っ!」
顔をしかめて両頬を摘んでくる。
軽くだから痛くはない、痛くはないけど−−気に喰わない。
「それに背も釣り合って、ない、し−−」

「−−雅美」
更に続く独断と偏見に満ちた僕批評はしかし、昏い声によって遮られた−−その主は勿論、
「か、香奈……」
僕の記憶が正しければ彼女にとって身長の話はタブーだった筈−−まあ、僕と殆ど変わらないのだから無理も無いけど。

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