PiPi's World 投稿小説

片思い
恋愛リレー小説 - 初恋

の最初へ
 1
 3
の最後へ

片思い 3

あくまでたまには本音を言う必要があると考えただけで、秘密を暴露してくれた事とは無関係−−と言う事にしておく。

尚、目に見えて落ち込む御崎にその後暫くクラスメイトはおろか教師さえペースを乱されていた。
驚くべき事に僕を除く周囲にとってそういう存在なのである、彼は。


「遅いよ、コウちゃん」
帰りの待ち合わせ場所にいつも通り時間ギリギリに到着。
案の定彼女の方が先に来ていたらしい。
「まだ二分前だよ、城山さん」
不意に明らかに不満そうな顔をする城山。
「何?」
「別に……」
彼女は足元の石をぽーんとけったりしている。「別に」と言う態度ではない。
彼女の気持ちには気づいてはいるが、中々これを言うには勇気がいる。
まして僕自身彼女が好きかどうかも疑わしい今なら尚更、だ。
「もういい−−行こ」
やがて諦めた様に戸惑う僕を置いて歩き出す城山。
この程度の事にすら応えられない僕は彼女に対して何が出来るんだろう。


他愛のない話をしながら駅までの道を行く僕と城山。
少し離れた二人の距離がその微妙な関係を表している気がした。

「−−でも正直意外だった」
不意に違う調子で発せられた言葉に歩みを止める僕。
「その……OKしてくれた事」
城山も少し遅れて足を止める。
後ろからではその表情を窺い知る事は出来ない。
「真壁君って何考えてるかわかんないから」
それはそっくりそのまま返したかった。
明るく社交的で友達も多い彼女に無愛想で無気力、厭世的な僕−−
「親にもよく言われるよ」
それでも極めて表面的な言葉で答えをはぐらかす。
「はは……確かに言われてそう」
僕の方に振り返ると何処か淋し気な笑みを浮かべる城山。
簡単に本心をさらけ出す彼女と必死に隠し続ける僕−−こんなところも正反対らしい。

SNSでこの小説を紹介

初恋の他のリレー小説

こちらから小説を探す