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片思い
恋愛リレー小説 - 初恋

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片思い 2

「お弁当、作ってきたんだけど……」
振り返るとほんのり顔を赤く染めた彼女、城山香奈がそこに居た。
成る程、そういう事か。
「ありがとう、城山さん」
彼女の態度が伝染したのか些かぎこちない手つきでそれを受け取る僕。
ホッとした様に彼女が隣に座る。
「……食べないの?」
「え、あ、うん。いただきます」
彼女に促されるままにおかずを口に運ぶ。若干見た目の悪いソレはそれなりに食べれる味だった。
今回ばかりは料理下手の母親に感謝しておこう。

「−−て、ソレ」
見ると彼女自身は購買のパンを食べている。
「えっと、その、これは……」
僕の意図するところが伝わったらしく少しバツが悪そうにする城山。
大方慣れない料理をした結果なんだろう。
僕はそっと母親の弁当を差し出す。
「……手を付けてないおかずだったら大丈夫だろ?」
「いいの?」
「いや、正直弁当二つは流石にキツイし……」
僕の皮肉混じりの言葉に再び顔を赤く染めて俯く城山。
しかし、次の一言で形勢は逆転する。

「生意気だよ、コウちゃんのクセに」

俯いたまま発せられた呟きに耳迄赤く染まっていくのが自分でもわかる。
「御崎君から聞いたよ。今でもお母さんからコウちゃん、って呼ばれてるんだよね?」
悪戯っぽい笑顔で覗きこまれ益々顔が赤くなっていく。
今はバラした張本人を怨む事すらままならない。
「うん、決めた」
暫くして何やら勝手に一人頷く城山。
嫌な感じだ。
「私、今日から真壁君の事コウちゃんって呼ぶね。良いでしょ?」
「うん、良くない」
冗談じゃない。そもそも母親のですら許可した覚えは無い。
「じゃあ特別に私の事呼び捨てにして良いから、ね?」
「……遠慮しときます」
取り敢えず丁重にお断りしておく。
第一僕にとって何のメリットもない。
「もう、とにかく決定。今日から真壁君改めコウちゃんでいくから」
「……二人きりの時だけなら」
仕方なく最大限の譲歩をする僕。
下手に拒否したら後が厄介そうだから−−そう自分に対して一応の言い訳をして。

その後も僕等は他愛の無い話を続けた。
好きなモノの事、友達の事、家族の事−−驚く程城山は僕について知っていた−−そして最後に当然の様に一緒に帰る約束をしてお互いの教室に戻った。
 

「……で、どうだった、愛妻弁当の味は?」
教室に戻って来た僕を待っていたのはやたらとテンションの高い御崎。
正直今はこれ以上の精神疲労は避けたい所だけど、何しろ相手が悪い。
「なあ、教えろよ」
「……旨かったよ」
いつものよりは。
「そりゃ良かった。安心したぜ」
僕に向けられる出来の悪い弟を見る様な優しい眼差し。
悪気は無いんだろうけど凄く馬鹿にされてる気がする。
「だけど遂に俺の光輝も−−」
「−−五月蝿い、黙れ、気色悪い」
抱き着こうとする友人に対して発せられた素直な気持ち。

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