PiPi's World 投稿小説

仮面少年の恋
恋愛リレー小説 - 初恋

の最初へ
 5
 7
の最後へ

仮面少年の恋 7

「声を大きく…」
書いてはみたものの実行出来る自信はあまりない。
「………あ、服もダサいよな」
あんまりこだわりがないから、お母さんが買ってくる某大型洋品店の服を着ている。しかも、黒や紺など暗い色が主だ。これも印象を暗くする要因の一つだよな、うん。
「服を買う…っと」
あとは………しばらく机にむかい真剣に自分の悪いとこを書き込み続けた。自分の悪いとこと真正面から向き合うことなんてなかったから凄くヘコむ作業だ…。「疲れたー…」
ゴロンとベッドに体を投げ出す。うー…精神的にも肉体的にもきつかった。
きつかったけどこれも優梨姉の『特別』に近づくために必要な事なんだと僕は呪文を唱えるように念じ続けた。

―次の日
僕は今、街中にいる。とりあえず、実行出来そうな『髪型を変える』と『服をお洒落に…』を実行しようと思って来た。すぐに中身を変えるのは難しいけど、外見なら簡単に変えられる。それに、外見が変わるだけでも、何かが変わりそうでワクワクしていた。ワクワクしていた…のはいいものの普段来ない場所に緊張しすぎてどうしたらいいかわからない。
えっと…まず、髪切ろう。美容院…ってとこ行かなきゃ…。どこがいいとかわからない…というか、いいか悪いかすら区別つかないからお洒落っぽいとこに入ってみるか。
「申し訳ございません。ご予約のない方は…」
勇気をだして入ったのに、あえなく失敗。予約とかいるのか!?
「あの…どうしても駄目ですか?」
「申し訳ございません」
食い付く僕に笑顔で丁寧な対応をするお洒落なお姉さん。…目が笑ってないけど。
「………わかりました」
事前に予約していなかった僕が悪い。ここは諦めるしかないだろう。
「渋谷君?」
帰ろうとすると、僕の名前を呼ぶ声がした。
「…西島さん」
「渋谷君って、美容院とか来るんだ」
いやいや、そんな意外そうな顔しなくても…。

「初めてだけど…」
「今から?」
「…いや」
言葉を濁す。勇んで来たものの断られたなんていくらなんでも情けない。
「ふぅん…」
うわ、嫌な反応。
「ここ、完全予約制だからねぇ」
見抜かれてるし。
「…じゃあ、僕帰るから」
西島さんの反応を軽く無視して帰ろうとする…が、前に進めない。西島さんが僕の腕を掴んでいるのだ。
「…何?」
「私も今日ここで髪切る予定だったの」
「それで…?」
「譲ってあげよっか?」
「………なんで?」
そう聞き返すと西島さんは少し音量を下げて、口止料、と呟いた。
「それに…」

SNSでこの小説を紹介

初恋の他のリレー小説

こちらから小説を探す