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仮面少年の恋
恋愛リレー小説 - 初恋

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仮面少年の恋 34


「さーて、パフェでも食べようかなぁ」
「あ、甘いの好きなのか?」
「女の子はねぇ、三度のご飯より甘いものが好きなんだよ」
「だから、食堂に甘いパンが売ってるのか」
 妙に納得した顔で頷いている。顔は怖いのにそんなことで感心してる彼に思わず笑ってしまう。
「面白いね、コウタは」
「なにがだよ」
「なにがだろうねぇ」
「なんだよ、それ」
「なんだろうねぇ」
「あのなぁ」
「あはは、ごめんごめん。ついからかっちゃった」
「ったく」
コウタは、髪をくしゃっとしながら、拗ねたような顔をする。私はいつもの自分を取り戻せていることに安心する。大丈夫、ちゃんと笑えている。

「ふけてみえるのか…」
むすっとした表情の中に僅かな悲しみを含ませ、自分の顔をそっと触るコウタ。ファミレスの店員に喫煙席かを尋ねられたのだ。
「大人っぽいってこと」
ありきたりなフォローだったが、彼は、そうか、と頬を緩ませる。年相応の単純さももっているのだ。
「突然、呼び出してごめんねー」
できるだけ軽く聞こえるように注意を払う。
「いや、暇だったし。なんかあった?」
「んー。あったといえばあったし、なかったといえばなかった」
「なぞなぞか?俺はそういうの苦手だ」
「あはは、だよねー。じゃあ。なかった」
「なんだ、それ?」
「ただ、会いたくなっただけ…ダメだった?」
コウタは深く考え込むように頭をゆっくりふった。そのあと、静か顔をあげ、深く息を吸い込む。
「俺は言ってねぇことまでわかってやれるほど、頭は良くない。察する、なんてことが一番苦手だ。だから、俺にはいつも真っ直ぐでいてほしい。優里菜の言ったことはなんでも信じる。いつでも優里菜の味方だ」
一気に話した後にお冷やをぐぐっと飲み干す。顔は無表情だが、耳が徐々に赤くなっていく。自分の言葉を冷静に噛み砕いた結果、恥ずかしさが出てきたのだろう。
優里菜は、その言葉が嬉しい…半分思った。残り半分は、真っ直ぐなコウタに対する後ろめたさ。
「ありがとう。嬉しい」
半分でも嬉しいと思ったのは本当。その気持ちだけを口にする。

おう、と短く呟いて口の中の氷をガリガリと噛む。まだ、照れが残っているのか目線は握ったままのコップに落とされている。
優里菜は、胸の奥がチリチリするのを感じた。なんともいえない感覚。冷静になるまでは、誰かといたかった、それがコウタであればいいとも思った。それと同時にコウタなら来てくれるといった確信があった。安心感、ともいえる。
冷静になった今、一人でいたいと感じる。他人といることが苦痛になってきている。
我が儘だ…私は我が儘な女。
コウタなら、帰りたいといえば素直に応じてくれる。「女の子は、そういう生き物なんだよ」と言うだけで、そうか、知らなかった、と受け入れてくれる。深く考えない、考えようとしないのは彼の良さではある。その反面、バカな男だとも思う。


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