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仮面少年の恋
恋愛リレー小説 - 初恋

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仮面少年の恋 30

うーん、今現在この状況が限りなく面倒くさいのだが。
以前の僕ならさっさと殴られて終わるだろうが今は奴隷だ、下僕だ。後でなじられるのもイヤだ。
なじられるのは嫌だけど、喧嘩なんてした事ないしな・・・僕。
それに下手に手出すと僕だけ停学くらう可能性あるし・・・
この学校に僕を助けてくれる教師もいないし、生徒もいない・・・
あぁ、あんな事言うんじゃなかった・・・
救いの女神なんて都合よくきてはくれない・・・
ははっ・・・なんか視界がぼやけてきたな・・・
「…おい」
不機嫌な野太い声が上から降ってきた。三村達とは違う低い声。
「人の昼寝、邪魔しやがって」
不機嫌そうな声が呟くのと同時に、うめき声。
失いそうな意識をなんとか保ちつつ、顔をあげる。
…ゴリラ?
そこには、さっきまで僕をリンチしていた連中をリンチするゴリ男がいた。
「人の玩具で遊んでんじゃねぇよ」
三村に馬乗りになりながら、攻撃の手を休めない。
「顔は…ヤバいんだよな?」
口の端で笑いながら、いたぶることを楽しんでいる。
その姿にぞっとした…。
救いの女神ならぬゴリラ…というか、悪役だよな、絶対。
三村の仲間はとっくに逃げてしまっていた。三村もなんとかゴリ男から逃れフラフラしながら逃げていく。ゴリ男は、僕のほうに向き直り、立て、と一言。
「ありがと」
なんとか立ち上がり、礼を述べる。
「ださ」
呆れ顔でボソリと呟くゴリ男。しかし、反論する勇気もないし、力も残っていない。僕はゴリ男を無視して屋上のドアを目指した。
「お前さー」
ゴリ男の声に立ち止まる。
「悔しくねぇの?」
「…別に」
そんな感情、とっくの昔に捨てた。
「お前、なんで髪切った?」
この前と同じ質問。ゴリ男の意図がわからないで黙っていた。
「結局、外見以外は何も変わってないのか」
ゴリ男の言葉にカァッと頬が熱くなった。熱い感情につき動かされ、思わず振り向くと、ゴリ男は、ニヤニヤ笑いながら、僕を見ている。
「なんだよ?」
挑発されているだけだ、落ち着け。頭の中の冷静な僕が囁く。しかし、ゴリ男の先ほどの言葉が頭をかけめぐる。
悔しくないのか?
悔しくない…わけがない。でも…でも!
「結局…」
ゴリ男の言葉が続かなければいい…それ以上は聞きたくない。だけど、僕の足は一歩も動いてくれない。
「何も変わってない」

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