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仮面少年の恋
恋愛リレー小説 - 初恋

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仮面少年の恋 23

「西島さんには…関係ないだろ」
そう告げると、西島さんの顔から表情が消えた…ヤバ、言い過ぎたかな?
「………のくせ………じゃない」
西島さんが周りに聞こえないような低い声を出す。
「…へ?」
「…下僕のくせに偉そうなこと言ってくれるじゃない」
―ヒューーー。
冷たい風が吹いた…気がした。

「ご、ごめんなさ…い」
本能で謝ってしまった。西島さんから出てくる負のオーラが周りの温度を急速に冷やしていく。
「西島さぁん」
そこへこないだ僕に話しかけてきた三人組の一人が割って入ってきた。…相変わらずあまったるい喋り方をしている。まぁ、なにはともあれ助かった。
「なんかぁ、センセーがプリント取りにこいってぇ」
「プリント?次の授業の?」
西島さんが顔に笑顔を張り付かせ、優しく聞き返すと、あまったるいしゃべり方の子は、自信なさげに頷いた。
「なんかよくわからないけどぉ…言われたぁ」

女の子は自分の髪をいじりながら、他人事のように言う…西島さんに取りにいかせるつもりだろうか?

「君が頼まれたんじゃないの?」
思わず口をはさんでしまった。
「そうだけどぉ」
「じゃあ、なんで西島さんに言うの?」
素朴な疑問だったが、女の子は一瞬目を見開いたあと、僕から目をそらし、すねたように口をとがらせる。
「ムカつくー」
「…え?」
「私が取ってくるわ」
笑顔のままそう言って西島さんが立ち上がると、女の子は明らかにほっとした顔になり、パタパタと仲間の元へ帰っていく。
「西島さんがとってきてくれるってぇ」
「さすがたよねー」
「やさしー」

………なんだかものすごぉぉぉく納得出来ない。パシリ扱いじゃないか。
足早に教室をあとにする西島さんを僕は慌てて追い掛けた…。
「西島さ…」
肩に手を置いた瞬間、おもいっきり振り払われた。そして、きっと睨まれて一言。
「あんた…バッカじゃない!?」
「………はぁ!?」
「もう、本当…意味わかんない」
西島さんは、イライラしたように自分の前髪をくしゃりと掴む。
「だって…なんでおとなしくパシられるのさ?」
西島さんは自分の腕をギュッと掴んで僕から視線をそらした。
「…それが私の"役割"だからよ」
「…役割?」
「渋谷君…もし、あなただったら拒否してた?」

すがるような目つきにドキリとした。いつもの西島さんじゃないみたいだ…。
「そんなの…」
拒否したに決まってる…そうはっきり言えなかった。きっと僕は拒否しなかっただろう。それがわかっているから…
急速に過去が蘇る。

「なぁ、お金貸してくんねぇ?」
都合の良い時だけヘラヘラ笑いながら歩み寄ってくるクラスメート…
かえってくるはずがない…そのことを知りつつも、相手の顔すら見れず財布を取り出す僕。
「うん、いいよ」

「渋谷が答えられなかったから、宿題出すぞー」
他の生徒を味方につけるため、僕を餌食にする教師…。

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