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仮面少年の恋
恋愛リレー小説 - 初恋

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仮面少年の恋 21

なにか言わなくては…
そう思うが優梨姉が上手い言葉が浮かばない…。言葉を探しているうちに砂のお城が完成した。
「…出来た」
…お城と呼ぶよりは山に近い代物だ。今にも崩れてしまいそうなほど脆い。
「はは…なかなかうまくいかないもんだね」
手についた砂を払いながら立ち上がると同時に僕のお腹が鳴った。雰囲気ぶち壊しだ。
「…朝御飯、食べてなかったから」
恥ずかしくなりそっぽを向きながら言い訳をすると優梨姉はクスクス笑った。
「お弁当、食べる?」
優梨姉が放り出しておいた鞄から可愛らしい弁当箱を取り出して僕に差し出している。
「…食べていいの?」

「うん、いいよ」
断る理由もない、ありがたく頂くことにした。まずは目についた玉子焼きから…。
「…おいしい」
「本当?」
「うん!これ凄くおいしいよ」
お世辞などではない。舌の上にじわりと広がる甘み…「ふふ、ありがとう」
ありがとうって…
「もしかして、優梨姉が作ったの!?」
「うん」
や、やったぁ〜、偶然とはいえ優梨姉の手作り弁当。寝坊して良かったぁ〜。…ん?寝坊…?
「…優梨姉、お弁当作る暇あったんだ?」
ギクリとする気配。
「遅刻してまでお弁当を作ったその心は?」

「………」
僕、いっちゃいけないこと言った?沈黙が重い…。
「…これもおいしい」
ハンバーグをつまみながら、さりげなく話題を変えたが優梨姉のテンションは下がったままだ。
「…ありがと」
「これも手作り?」
「うん…」
はぁ…昔からだったよな、いつもは明るいのに一旦テンションが下がるとなかなか元に戻らない。こんな時は優梨姉が元気になるようにくだらない冗談を飛ばしたりしてたっけ…?冗談…冗談…何か気の利いた冗談は………僕の目におにぎりが映った。

…………。
「…優梨姉」
名前を呼ばれ、優梨姉が顔をあげた瞬間、歯を見せてニコッと笑う。前歯の一つに隙間なくついた黒い海苔が僕の顔をアホ面にみせてる…はず。
沈黙…
一秒、二秒、三秒…
「………あはっ」
優梨姉が耐えきれなくなったのか、吹き出す。
…勝った!
「好太っ…なにそれ〜?」
何も言わずにニヤッと笑う。
「あはは…ちょっと…変な顔〜」
…結構、捨て身の芸だよな、これって。プライド捨てた気分。
「面白い〜…あははは、はは、ははは」
っていつまで笑ってんの!?

「そんなに面白かった…?」
優梨姉の顔を覗き込むとあからさまに僕から視線をそむける。
「ごめ…今…好太の顔…見れない…」
お腹をおさえながら、また吹き出す優梨姉…元気になってくれたから、いっか。優梨姉の笑いがおさまるまで待とうと僕は海を眺めた。
寄せては返す波が、僕らが作った城の形を崩していく。

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