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仮面少年の恋
恋愛リレー小説 - 初恋

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仮面少年の恋 19

不思議と落ち着いた気持ちだった。優梨姉は、小さく首を傾げて先を促す。
「変わった僕も受け入れて欲しい…」


優梨姉の顔を見つめながら、僕はこの人が好きなんだ…と改めて思った。
理屈じゃない、どうしようもないほど優梨姉のことが好きなんだ。
「…当たり前でしょ?」
たっぷりの沈黙のあと、優梨姉はニッコリ笑ってそういってくれた。


「なんか…機嫌良いね」
優梨姉の家からの帰り道。西島さんを駅まで送るため、いつもと違う道を歩いていた。もう随分と暗くなっているのだ。まさか一人で帰すわけにもいかない。
「そ、そうかな?」
西島さんに指摘されてギクリとする。
「…何かあったわね?」
す、鋭すぎる。
「…別になにもないよ」
「…ふぅん」

もっと突っ込まれるかと思ったが、西島さんはそれ以上追求してこなかった。
「渋谷君、今日怒ってたでしょ?」
「え?」
「ごめんね、邪魔して」
「………西島さんが謝った」
なるべく重い空気が散るように、僕は心底驚いた声を出した。
「…ちょっと!人が真剣に謝ってるのに…」
「しおらしくなるなんて西島さんらしくないよ」
僕は出来る限り軽い口調で言う。すると、西島さんはやっと表情を和らげてくれた。
「渋谷君は…優しいね」
なんだか照れ臭い…。
「…この前言い忘れたんだけどさ、西島さんも一緒に変わろうよ」

どんな事情があるか知らないけど、西島さんは変わりたいって思っている。
西島さんの万引きを見ちゃった時は、面倒なことに巻き込まれた…と思っていた。でも、西島さんのおかげで僕は変われた。
ギブアンドテイクってわけじゃないけど、僕も西島さんの役に立ちたいと思ったんだ。
「一人では無理でも、二人でなら変われると思わない?」
西島さんはぎこちなく頷く。そして、みるみるいつもの顔に戻っていった。西島さんの本性の顔…少し意地悪な小悪魔スマイルだ。
なんだか嫌な予感…。
「これからは、私の下僕ね」
「………はぁ!?」
「じゃあ、また明日学校でね」

そう言うと西島さんは僕の言葉など聞かずにかけていってしまった。
ゴリ男の玩具で西島さんの下僕…
僕、本当に死んじゃうよ…


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