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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 981

死の情動タナトスから黒崎孝義は逃れたと思い込んでいる。だが、化学者アルベール・レノは自分をふくめた世界中のジャンキーが絶滅すれば、ドラッグは使用されなくなると思っていた。正常な判断力や思考を保っていると信じている間もアルベール・レノはドラッグの後遺症に心は蝕まれていた。
せめて合成ドラッグ〈ange〉を使用した人間は生かしてはおかないという悪意が込められている。
アルベール・レノは愛する島袋琉を、自分が死ぬときに道づれにしたいと思ったことで、自分が正常な思考と判断力を喪失していることを自覚した。そして、島袋琉の前から姿を消した。
黒崎孝義は、もともと治療のために見つけ出したはずのカウンセラー藤崎柚希から離れて行動している。
黒崎孝義は、アルベール・レノのようにドラッグについて後遺症の症例をふくめて研究したわけではない。知識が足りない。だから、後遺症の恐ろしさを警戒していても、中途半端に油断している。
自慰は他人との関わりの快感を避けて、肉欲を自己完結させる行為である。しかし、快感の元となる欲情は他人との関わりを思い浮かべるために、肉欲は発散されても、心を満たすことはできない。
黒崎孝義は、幻覚触手プレイをするようになってからは、自慰をまったくしなくなっていた。
幻覚触手が制御できなくなり、自分に対して襲ってくる可能性。
それは、ドラッグの後遺症の症例では、全身に虫が這いまわる幻覚に襲われたり、体内に虫がわいたと思い込む症例があることをふまえれば、すぐにわかるはずだった。

腹の中には虫がいて、その虫たちがあらゆる病を引き起こしている。現代ではファンタジーのような考えだが、戦国時代には本気でそう信じられていた。
今でも、腹の虫がおさまらない、虫の居どころが悪い、癇の虫、といった表現が残る。
腹中虫は、九州国立博物館所蔵の「針聞書(はりききがき)」に記録がある。戦国時代の永禄11年(1568年)に、大坂の茨木二介(いばらきにすけ)によって編まれたこの書物は、江戸時代には医学書として実際に医師の間で使われた。
杉田玄白は、こうした日本の医学と海外の医学の考えかたにはあまりに落差がある、我が国の医学は遅れていると強く感じた。
腹中虫といっても今の私たちが思うような昆虫の姿ではない。馬や牛のようなもの、人の顔のついたもの、蜥蜴ようなものとさまざまな姿が想像されている。
荒唐無稽な説明であれ、それで納得して病が治る患者がいたということである。
たとえば「悩みの虫」と紹介されている腹中虫は、螺旋を描いた蛇がうなだれている姿で描かれている。
肺に棲み、落ち込ませる虫。些細なことにも悲しんで、世の中が嫌になってしまう病の元とされていた。物憂げな表情をしているこの虫の好物の酸っぱいものを飲食すると治るとされている。
現在の精神科の診断であれば神経症や鬱病とされる症状も、腹中虫として説明され、患者が信じることで症状が緩和したので、治療法として使われていたのである。

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