媚薬の罠 924
かつてキリスト教では、規範として性的な情報を抑圧したと簡略化されて説明されることが多い。
だが、正確には信者たちに対して聖職者たちによって行われた情報のエンクロージャー(囲い込み)の運動だった。
キリスト教の聖職者が規範を17世紀以降は、たとえばビクトリア王朝時代に性的な発言は人前では恥や無礼とされて、品性を疑われることで、性的な欲望を抑圧することによって精力の浪費を抑え、それを奉仕の労働において昇華し、最大の効果を発揮するようにした。また、社会の生産性と有用性に貢献する、つまり出産して子供を増やすことを目的とした夫婦間の性行為以外は罰が与えられ、他の性行為は禁じられた。
こうした簡略化された情報は、精力=労働力ということを根拠にしている。性的な欲望の昇華。エネルギーの再利用。
禁欲することや、性行為の目的を明確にして他の性行為をしなければ、労働意欲が維持されて、夫婦間の子作りが盛んになることで、聖書の創世記に記された虹の契約によって生きられるとされたと簡略化されて説明される。
神はノアとその息子たちを祝福して言われた。
「産めよ、増えよ、地に満ちよ。
あらゆる地の獣、あらゆる空の鳥、あらゆる地を這うもの、あらゆる海の魚はあなたがたを恐れ、おののき、あなたがたの手に委ねられる。
命のある動き回るものはすべて、あなたがたの食物となる。あなたがたに与えた青草と同じように、私はこれらすべてをあなたがたに与えた。
ただ、肉はその命である血と一緒に食べてはならない。
また、私はあなたがたの命である血が流された場合、その血の償いを求める。あらゆる獣に償いを求める。人に、その兄弟に、命の償いを求める。
人の血を流す者は、人によってその血を流される。
神は人を、神のかたちに造られたからである。
あなたがたは、産めよ、増えよ。
地に群がり、地に増えよ」
神はノアと、彼と共にいる息子たちに言われた。
「私は今、あなたがたと、その後に続く子孫と契約を立てる。
また、あなたがたと共にいるすべての生き物、すなわち、あなたがたと共にいる鳥、家畜、地のすべての獣と契約を立てる。箱舟を出たすべてのもの、地のすべての獣とである。
私はあなたがたと契約を立てる。すべての肉なるものが大洪水によって滅ぼされることはもはやない。洪水が地を滅ぼすことはもはやない」
さらに神は言われた。
「あなたがた、および、あなたがたと共にいるすべての生き物と、代々とこしえに私が立てる契約のしるしはこれである。
私は雲の中に私の虹を置いた。これが私と地との契約のしるしとなる。
私が地の上に雲を起こすとき、雲に虹が現れる。
その時、私は、あなたがたと、またすべての肉なる生き物と立てた契約を思い起こす。大洪水がすべての肉なるものを滅ぼすことは、もはやない。
雲に虹が現れるとき、私はそれを見て、神と地上のすべての肉なるあらゆる生き物との永遠の契約を思い起こす」
神はノアに言われた。
「これが、私と地上のすべての肉なるものとの間に立てた、契約のしるしである」
この聖書の虹の契約の逸話のために「産めよ、増えよ」の具体的な方法として、聖職者たちが性的な欲望の抑圧を規範にしたという簡略化された説明である。
これはエロいことを考えてムラムラしていたら、力仕事も筋力増大、疲労感も軽減される。夫婦間以外の性行為、たとえば自慰はエネルギーの無駄使いで、子作りや労働の弊害になるから悪いこと、だから罪としますという説明である。
たしかに性的な欲望でムラムラしている興奮した状態の時に、性行為をしようとする意欲や行動力はあるだろう。
それが神へ信仰心を示す奉仕活動の労働意欲にどうやって変換されるのか、この簡略化された説明からは不明である。