ファンから「パトラ様」と呼ばれている水越ユイは、聖戦シャングリ・ラでは、女伯爵シャンリーとして、緒川翠に描かれている。
緒川翠はスポンサーのＡＶ作品製作会社サンダースがら依頼され、人気ＡＶ女優を１０人ほどキャラクター化した。
水越ユイの見た目ではわからない激しさや強さを、緒川翠は直感的に見抜いた。

性的な情報は抑圧される。
エロマンガ家のメイプルシロップこと緒川翠。ＡＶ女優の「パトラ様」こと水越ユイ。官能小説家の藤井茉莉。
彼女たち３人は、性的な情報をそれぞれちがう表現で世界へ伝達する。
映画に似たカメラワークを、ページという空間にコマ割りという技法で展開しつつ、絵とセリフによって伝えるマンガ。
撮影するカメラの映像をつなぐや切り替える技法で、自らの肉体の身振りや声なとによって伝える映像作品。
単語、文章、行分け、章立てのつなぎや切り替えをナレーションの技術で、登場人物に演じさせることや風景や物を想像させることで伝える文芸作品。
彼女たちが表現することが許される性的な情報は、想像力によって幻想界に漂う情報をつかみ取り、再構成して、それぞれの表現方法に変換して生成される。
それぞれの市場で作品は商品となる。商品はそれぞれの消費者へ渡る市場で、価格をつけられ、金銭と交換される。
作品、商品、嗜好品と呼ばれかたを変えられながら、消費者の空想、妄想、想像などから、衝動・感情などを誘発する。おもに個人的な自慰行為に使用され、使用後は保存される。
消費者の記憶や想像の強度によって、幻想界へ性的な情報から解体され回収されて破片として漂う。
この情報の循環が市場を通じて消費者のニーズに合わせて商品化された情報と、金銭が交換されること。財産の分配、搾取、蓄積、再投資という経済を「欲望」と「消費」によって動かし続ける。
情報は再構成され、性的な情報にされ、創作物として加工されたとしても、市場に引き出され商品としての価値が評価され交換が成立しなければ、商品化される子とがなく、目にした人たちによって幻想界へ情報は分解と回収が同時に行われて破片として漂う。
倫理規制で表現に黒塗りや白塗り、モザイク、文章差し換えなどの抑圧は、むしろ、抑圧ではなく、隠されているからこそ消費者は想像する。それは「ミロのヴィーナス」の欠落している腕と手と同じように、自分の性体験を想像することもあるかもしれない。また、無修正という作品が、別の市場で流通することにもつながる。比較対象があれは、隠されていないのと大差はない。想像力はさほど必要としない。
抑圧は、幻想界から作者や商品化する関係者と消費者が、想像力で何をつかみとり再構成するかというところで、世界をどのような認識でとらえているかというところに関係している。
性的な情報と認識すること。それによって想像力で幻想界の無数の情報から再構成するが、世界の人たちから忘れられてしまえば、幻想界の情報は引き出されることがない。
あと、想像することを止めてしまえば情報が引き出されることがない。