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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 922

藤井茉莉には、自分ではない他人になってみたいという願望はなかった。
水越ユイがベッドで、名家の美人婦人、令嬢、未亡人、美人服飾デザイナー、美人OLなど、いろいろな官能小説のヒロインになってみたいと、ふたりでどんな話しかたか、とんな表情をするかなど、笑いながら話していると、藤井茉莉は水越ユイが、たまに演じてみせて、ドキッとすることがあった。
水越ユイは女優だった。
藤井茉莉は水越ユイの演じてみせたヒロインを思いながら執筆した。
水越ユイは、恋人というだけでなく、藤井茉莉に創作意欲を起こさせてくれる芸術の女神ミューズなのだった。
アドルフ・ヒトラーに人体実験をされる人を思い浮かべる想像力があれば、総統ではなく、画家として身を立てられていたかもしれない。アドルフ・ヒトラーには、芸術の女神ミューズがいなかった。世界を想像力で感じることに協力してくれる人がそばに誰もいなかった。
ルイス・キャロルには、アリスという芸術の女神ミューズがいた。

「真理亜さん、気持ちいい?」

水越ユイは返事のかわりに、藤井茉莉に濃厚なキスを返した。
初めて対談で会った日だけしか、水越ユイは合成ドラッグを使わなかった。
残りの合成ドラッグを、ふたりはホテルの水洗トイレに流して捨ててしまったからである。

「ドラッグなんて1度でいいわ。それに真理亜さんが、他の人に使ってみたくなったら困るもの」
「ドラッグはね、こわいのよ。いつバットトリップになるかわからないから」
「えっ、そんな危ないことを。じゃあ、何で私と一緒にドラッグを使ったんですか?」
「なんでかしらね、ふふっ、藤井先生、それはゆっくり、これから何年も考えて」

水越ユイはそう言ってすっかり合成ドラッグが流れきってしまったのを見届けてから、部屋に戻りながら胸の中で、そっとつぶやいた。

(さよなら、ヒカル。私はあなたが私のことを好きだったのは気づいてた。でも、あなたは私の運命の相手じゃなかった)

合成ドラッグと水越ユイを好きだったことを告白する手紙を郵送して、自殺してしまった女優の美原ヒカル(みはらひかる)は、水越ユイの女優の才能に惚れていた。しかし、水越ユイの女優ではない真理亜の部分については、あえてふれないようにしていた。
藤井茉莉はちがう。水越ユイの真理亜の部分しか知らない。
人生の過去は変わらない。美原ヒカルは優しい人だった。でも、臆病だった。
水越ユイは、ドラッグで壊れてしまった家庭教師のことも、集団レイプされたことも、生徒の男の子を好きになったことも、全部ひっくるめて自分だと受け止めて、今を生きている。
何があっても生きて幸せになってやる。その覚悟が美原ヒカルはわからなかったのだと、水越ユイは思う。そして、美原ヒカルには、その覚悟はなかった。それでも、女優に憧れていた美原ヒカルを、水越ユイは嫌いになれなかった。
美原ヒカルの残していったドラッグをトイレに流して、水越ユイの美原ヒカルの弔いは終わった。
もし、藤井茉莉と一緒にドラッグを使って、バットトリップで自殺するかもしれない危険はあったが、藤井茉莉を信じてやって良かったと感じた。
藤井茉莉がドラッグに1回で溺れてしまう弱い人間だったら、死ぬよりつらかったと思う。ドラッグに溺れてしまえば、壊れた家庭教師と同じように、死ぬか壊れるまで、水越ユイが止めさせようとしても、止められなくなる。
もしも、藤井茉莉が依存しきってしまったら、水越ユイは、藤井茉莉を殺して刑務所に殺人罪で服役するつもりだった。
水越ユイは、どんなにつらい後悔の日々が続くとしても、まったく死ぬ気はない。たとえ自分の行動に過ちがあっても、受け止めて生きていく覚悟ができている。

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