ジャズなどの黒人音楽、社会主義者やユダヤ人の作る音楽、そして実験的な近代音楽・現代音楽は「退廃音楽」として規制された。
アドルフ・ヒトラーが愛した音楽として、ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナーの「ワルキューレの騎行」は有名である。
ワーグナーはすでに他界しており、アドルフ・ヒトラーは会うことはなかったが作曲家ワーグナーのファンとして、ワーグナーの遺族とも交流し、資金援助なども行っている。
ここからわかるのは、アドルフ・ヒトラーが栄誉や賞賛求めて行動していたということである。
すでに世界恐慌が起こるほど、資本家が金銭を希少価値と考え、貯蓄しつつ同時に投資することで、企業の利益により報酬として労働力の成果を搾取し、さらに投資を繰り返すことで報酬を受け続ける経済による支配のシステムが成立している。投資する代わりに時間と労働を捧げて報酬を得る小さな投資の資本家と、大きな資金を動かして投資する資本家の時代になっている。
投資による報酬による金銭の分配が市場の役割であり、無限ではない希少価値のある世界にある財産を資産家から税収によって貯蓄している国が、支配権を持つ大国と考えられるようになっている。
西洋の中世をやや単純化すれば、キリスト教が規範として人々を支配していた時代である。ローマ帝国が滅亡して、キリスト教が布教されて人々の規範となる間の貧困の時代のあと、森を開拓して多神教からキリスト教へと統合されていくと同時に人口が増加していったあとは、キリスト教が支配権を持ち、王や貴族もキリスト教の規範の下にある時代を迎えることになる。もちろん労働として作物を生産する多数の平民たちがキリスト教を信仰していたので、王や貴族の少数の支配階級はキリスト教を信仰する者たちを従えるには、キリスト教を無視することは不可能だった。それは、かつてローマ帝国の時代と事情は同様である。
ただし、中世のキリスト教が規範となり支配力を持つ時代になると、王や貴族たちは聖堂の建設、豪奢な典礼、僧院の維持などのために財産を使うようになる。
ローマ帝国はその財産をキリスト教ではなく戦争に投資し、領土の拡大によって利益を生み出し、再び戦争を繰り返すことで富の蓄積を行わなかった。戦争は繰り返すほど、莫大な資源や人命を消滅させることになる。しかし、戦争の勝利が支配権を獲得する手段であり経済は、軍資金をいかに確実に調達するかという目的のためのものであった。命は神に捧げるものであり、戦争の勝利で得たものを生き残った者で惜しげなく分配した。そうしなければ反乱を起こしたり、戦争に出征しても命がけで戦わなかったりしたからである。この戦争の領土拡大による社会システムは、戦争が長期化することで破綻し、ローマ帝国でさえ滅亡した。
アドルフ・ヒトラーが親衛隊や軍部の人材に求めたのは、ローマ帝国が戦争を繰り返していた頃の絶対的忠誠である。だが、アドルフ・ヒトラー自身が配下の人材を信用しきれなかったことで、配下の人材の絶対的忠誠の実現は失敗した。