彼らは特に東部で活動し、森やゲットーに潜伏しながらドイツ軍と戦った。
ユダヤ人パルチザン部隊は、反ユダヤ主義が広範囲に及んでいたため、周辺の住民からは、ほとんど支援を受けられなかった。それでも２万人から３万人ものユダヤ人が東欧の森でドイツ軍と戦った。
暴力に対して暴力で対抗するしかないほど追い込まれた組織化された武装レジスタンスは、ユダヤ人が示した最もわかりやすい抵抗である。
ヨーロッパの多くの地域では、抵抗の代わりに支援や救援、精神的なレジスタンスに協力した。
ユダヤ人の文化施設の保全や宗教的儀式の継続は、大量虐殺というアドルフ・ヒトラーのナチスの政策への、精神的なレジスタンスの表れだった。
アドルフ・ヒトラーはキリスト教の信者たちを敵にまわしたのである。
キリスト教の倫理や規範から国民を脱却させて、自分の定めた思想や法律で国を支配する。
そのための手段が、アドルフ・ヒトラーのユダヤ人殺害計画だった。
ゲットーおよび収容所から何とか逃れた一部のユダヤ人は、独自の戦闘集団を形成した。パルチザン（戦闘員）は、深い森林地域に集結していた。
占領下のソ連地区の大規模なパルチザンのグループは、リトアニアの首都ヴィリニュス近郊の森に隠れていた。
彼らは、数百もの列車を脱線させ、３千人以上のドイツ兵を殺害した。
深い森林内でのパルチザンとしての生活は過酷だった。彼らは発見されるのを避けて場所を転々とし、農家の備蓄食料を奪い、丸太と枝で創った粗末な隠れ家で冬を過ごさなければならなかった。
地元の人々がパルチザンに対して協力的な地域もあったが、多くの場合、反ユダヤ主義が広範囲に及び、また支援した場合の厳しい処罰を住民が恐れたため、支援を受けることはできなかった。パルチザンは、ドイツ軍に自分たちの居場所を知らせる地元の通報者に絶えず怯えながら生活していた。
アドルフ・ヒトラーに優れた想像力があり、世界の秘密である幻想界のかかわりに気づいていたら、ユダヤ人パルチザンたちと、遠い過去のホモ・サピエンスたちが、同じ欲望の力によって行動していることに気づき、過ちを犯したことを理解しただろう。
ホモ・サピエンスは生き残った。生き残るための欲望の力と、かつて画家を目指し演劇を愛したアドルフ・ヒトラーを、芸術家ではなく不況の低迷した国の政治家としてしか認めなかった全世界を革命したいという思いでは、どちらが強度があるか。
アドルフ・ヒトラーは自殺した。拳銃の銃口を咥えて引き金をひいた。銃弾は後頭部を抜けて、彼の頭脳を破壊した。
アドルフ・ヒトラーは、近代美術をひどく嫌った。彼が好んだ芸術は近代美術以前の伝統的な絵画であり、身体のゆがんだ表現主義的な芸術や抽象芸術は理解できなかった。近代美術を担っていた芸術家や画商にユダヤ人が多かった点もヒトラーにとって気に入らなかった。そうして、前衛的な表現や非ドイツ人的な表現を退廃芸術と名付け弾圧を始めた。５千以上の数の作品が押収され、売却や焼却処分された。
退廃芸術とは、ドイツのナチス政権が近代美術に対して名付けた造語である。国内における非ドイツ的、ユダヤ系、共産主義的な芸術は禁止され、退廃芸術家に指定された人たちの活動は制限された。制限を受けたものは芸術家だけでなく、美術学校で教鞭をとるものや近代美術を扱うなど画商など近代美術関係者全体にまで及んだ。
１９３７年にはミュンヘンでナチス政権企画のもと退廃芸術展というタイトルで展覧会が開催された。
ナチスが押収した近代美術が一斉に展示され、各作品を嘲るテキストラベルが付けられた。その展示会は近代美術への批判を一般大衆に煽るように設計された展示構成になっており、その後、ドイツの各都市や、オーストリアで巡回展示が行われた。
近代美術の表現や販売が制限して、ナチス政権は近代美術以前の伝統的な絵画や彫刻を奨励する。また人種差別主義やナショナル・ロマンティシズムに価値を置く「血と土」、軍国主義、従順性などの思想を国民に広く推し進めた。
退廃芸術による表現の規制は美術だけでなく音楽や映画や書籍などあらゆるジャンルに及んだ。