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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 904

30歳の数学者ドジソンが10歳の「小さなお友だち」のアリス・リデルにせがまれ、ボート遊びの際に語ったものを文章化して出版した作品が「不思議の国のアリス」である。
テムズ河でのボート下りを楽しんでいた夏の日に、ルイスが即興で語った、懐中時計を手に大急ぎで走り去っていく白ウサギの物語。自分と同じ名前の主人公が登場する冒険譚をとりわけ気に入ったアリスが、物語の続きを知りたいとおねだりしたのがきっかけとなって、執筆された物語はドジソン自身が丁寧にイラストを描き加え、アリスに手渡されたことで完成を見た。アリスにラブレターのように手渡された手書きの物語に「地下の国のアリス」というタイトルをドジソンはつけていた。
それですべては、終わるはずであった。
ところが、ドジソンの知人で彼が「師匠」とあおぐ詩人で聖職者のジョージ・マクドナルドから絶賛され、書籍化を強く勧められたことにより、事態は別の展開を迎える。彼はマクドナルドのアドバイスを受け、アリスのためだけに手書きされた物語を、一冊の正式な本として出版することを決断した。
ドジソンは露骨な文章には手を入れ、さらにプロのイラストレーター探しに乗り出す。児童書において挿絵がどれほど重要かを理解していた彼は、イラストレーターの採用に妥協するつもりはない。
やがてその熱意に打たれた人気風刺雑誌「パンチ」の編集者を介して、売れっ子イラストレーターのジョン・テニエルを紹介される。
テニエルは観察眼が鋭く、また動物の生態に関する知識も豊富に持ち合わせていたため、ウサギ、芋虫、ヤマネ、ウミガメやドードー鳥などの動物がぞろぞろ出て来るドジソンの物語のイラストレーターには適任と紹介した編集者は思った。
ただ残念ながら、2人の仲はあまり良好なものにはならなかった。自分のイメージにこだわるルイスは、しばしばテニエルのイラストに文句をつけ、出版にこぎ着ける頃にはかなり険悪なものになっていた。
本の出版費用は、イラスト代もふくめ全額ドジソン自身が負担することになっていたこともあり、彼は妥協することがなく、2人は終始ぶつかり合うはめに陥った。もともと自分で挿絵を手書きしていたドジソンである。
そうした困難を乗り越えた1865年11月、書名を「不思議の国のアリス」と改めて、無事刊行された。人気イラストレーターが挿絵を描いていることもあって評判となり児童書として好評を持って迎えられた。
数学の教師ドジソンが、ルイス・キャロルになること。人は常に同じではない。ボートでアリスにおしゃべりをしていたドジソンと「不思議の国のアリス」の執筆者のルイス・キャロルには、差異の断絶がある。しかし、違う時間を生きる人間を、同じ欲望がつなぐことで、その差異を隠してしまう。
ケンブリッジ大学内のドジソンの自室を頻繁に訪れるほど仲が良かったリデル家の子どもたちだが、手書きの「地下の国のアリス」が完成する時期を境に亀裂が入り、その深く大きなひび割れは二度と埋まることはなかった。
1863年6月頃まで彼らの関係は良好で、6月にはいつものようにピクニックへ一緒に出かけているし、ルイスの日記にもそのときの楽しげな様子が書き残されている。
しかし、その次のページはカミソリで乱雑に切り取られ、次にリデル姉妹に関する記述が出てくるのは半年後。
しかも、街で姉妹とその母親に偶然出会った彼が「私は彼らに対し超然としていた」と書き記しているだけである。
半年前のピクニックで、一体何が起きたのか、肝心の日記が切り取られているため、詳細はわからない。
破り捨てられた日記のページ。
それは、ドジソンとルイス・キャロルの生の断絶を分かりやすく示している。
これは彼の死後に日記を整理した彼の義妹が「一家のために公にしたくない事実があったため、切り取って削除した」と言われているが、真相は闇の中である。

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