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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 902

圧倒的な暴力は、殺戮による平等な死をもたらす。階級の格差も、それぞれの個人の差異を無視した平等の均質化。格差社会で、弱者が起死回生の階級の交換の革命すら不可能な時に、一つの思想や暴力に加害者として身をゆだねることによって誰もが平等であると考えさせるファシズムは、芸術とは真逆の力といえる。差異を想像させるものが芸術なら、目の前の差異を隠蔽するものがファシズムといえる。
緒川翠の想像するまだ名も無き千人のヒロインたちに愉悦で、平等にそれぞれの差異を打ち消してしまう圧倒的な暴力。檜垣隆史とのセックスはたしかに想像力から差異を奪う、圧倒的な暴力である。
ただし、檜垣隆史はファシストになれない。緒川翠と檜垣隆史という存在が、明らかに違う他人であるという差異によって、ふたりは欲情し、愛しいと感じながら、それぞれ絶頂するからである。
愉悦とは、差異によるものである。
藤井茉莉に対して、水越ユイはファシスト的といえる。ドラッグによって、藤井茉莉には圧倒的な暴力であり、快感をもたらす。だが、ふたりの存在の差異に欲情したわけではなく、ドラッグのめくるめく快感と酩酊の中にひとつになりたいという欲望で興奮しているからである。
水越ユイは、官能小説家の藤井茉莉に対しては弱者である。それを本来は他者との非連続性、存在の差異が稲妻の閃光のように愉悦をもたらすセックスを放棄して、ドラッグを使用したことで自慰のような錯覚にすら陥れさえもする酩酊と快感でひとつになる悦びに溺れる行為にのみ込むことで、同じ淫らな牝にすることで、平等な立場にしようとした。階級闘争としてのドラッグを使用した性交、キメセク。
本当の創作をする作者に対しては、登場人物は絶対服従などではなりえない。作者に個性という差異を想像して生み出すことを求める。
藤井茉莉は自分のデビュー作の虚構の世界に、ルイス・キャロルの「不思議な国のアリス」の少女アリスように迷い込んでしまい、今、ベッドの上でヒロインの真理亜から、指の腹で撫でまわすように牝の花に溜まった蜜を弄られていると思い、快感に声をもらして身悶えていた。
MDMAは服用後、およそ30分から1時間以内に効果があらわれ、5時間から6時間ほど効果が持続する。藤井茉莉に投与された合成ドラッグのベースは、MDMAである。親近感や多幸感を感じ、肌が敏感になる。幻覚を見てしまうことで、音楽に合わせて視界のものが踊っているような動きをしたりする。真理亜に抱きしめられると、泣きたいぐらい気持ちいい。とても安心する。ぬいぐるみが子供に抱きしめられている時は、こんな気分なのかもしれないと藤井茉莉は思うと、くすくすと笑うのが止まらない。真理亜の唇が笑う茉莉の唇に重ねられる。

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