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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 900

現実にいないはずのものが目の前にあらわれたような不気味さを、藤井茉莉は対談しているAV女優に感じた。
死者が姿をあらわすのが亡霊であるとすれば、藤井茉莉にとって作品のヒロインと芸名ではなく本名は同姓同名であり、まるで自分の日記を読んでいるような気がしたと感想を告げられた時の驚きは、亡霊を目撃して立ちすくむ人のような感覚なのだった。
真理亜(まりあ)というヒロインの名前は、読者が勝手にキリスト教の聖母マリアを想像するように、藤井茉莉が悪戯で名づけた。作者の名前も茉莉なので、勝手に読者が登場人物と作者を重ねて読むかもしれないとも考えた。
対談では、官能小説と似たような体験をした子がいるとAV女優は話した。藤井茉莉は、撮影現場で恋愛関係はあるか、といったよく対談記事でありそうな当たり障りのない会話を録音した。
収録場所は銀座の会員制クラブ「パンドラ」ではなく、ホテルの一室を藤井茉莉は用意してもらった。そのまま原稿を仕上げることや、編集者は収録に立ち会わないという条件で、対談企画の依頼を受けることにした。

「真理亜さん、お疲れ様でした」

藤井茉莉はショートカットの髪をかき上げ、珈琲カップを手にしながら作り笑顔で言った。

「もっと歳上の人がこの小説を書かれたのかと思っていました」

文庫本の見返しの部分に藤井茉莉にサインをしてもらいAV女優の水越ユイ(ゆなたゆい)は、文庫本を膝の上に置いて目を細めて愛しげに撫でた。
藤井茉莉のデビュー作である「淫獣の覚醒〜都合のいい肉玩具」のヒロイン真理亜は、水越ユイにとって過去の自分で、分身のような気がしている。愛しくてたまらない。
ドラッグ関連の話は、対談ではおたがい避けた。水越ユイは現役のAV女優で、藤井茉莉もデビューしたての新人作家。下手に話せはふたりとも今後の仕事に悪影響がある。

「藤井先生はこのまま、この部屋で執筆ですか?」
「対談の書き起こしと、並べかえってところです。明日からやります。今日はもう働きません」

藤井茉莉はそう言って、ぐいっと珈琲を飲み干した。喉が渇く。

「それは良かったです。ふふっ、ねぇ、藤井先生、今夜はたっぷり牝の本能に目覚めていただきます」

差し入れで持って来たクッキーやシュークリームの他に、水越ユイが淹れた珈琲には、合成ドラッグ、それも仕込みやすいように口当たりの良い甘味が加えられている溶液や粉末が含まれていた。
家庭教師の脅迫と調教、集団レイプ、教え子との情事、そしてAV女優としての日々で、水越ユイはすっかり男性不信になっていた。

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